☆ 熱戦に水を差す奇妙な野球アジア地区五輪選考基準 ☆

里見哲

 星野ジャパンは、野球北京五輪アジア地区予選を勝抜き、本選出場を決めた。昨年のWBCに続き、野球というスポーツの面白さを堪能させてくれた。国を代表する野球選手たちが、全力で勝負する密度の濃さに圧倒された。日本有利と見込まれた台湾戦でも、台湾は一時逆転するなどの粘りをみせ好試合となった。ところが、この試合が中盤まで接戦となったことから、代表選出に関する基準の矛盾点が浮き彫りにされた。

 3チームが2勝1敗で並んだ場合、第1の基準として、失点を相手チームの攻撃イニング数で除した数値が一番小さいチームが1位となると定められていた。前日までの当該チーム間の対戦は、日本対韓国が4対3、韓国対台湾が5対2であった。韓国は6失点、1試合残す日本と台湾は、それぞれ3点と5点であった。厳密には後攻めのチームが勝つ時には、九イニング未満となり、分母が異なることになるのだが、ここでは、日本―台湾戦で、日本が負けても0対1または1対2の場合は、日本が最小失点となり五輪出場権を獲得できる状況であったことを押さえておいていただきたい。前者の場合は、日本の総失点は4点、後者の場合は総失点5であり、韓国、台湾ともに総失点は6点である。したがって、台湾戦の6回に陳金鋒の2ランで逆転されても、そのまま1対2で試合が終われば日本は本選進出であった。

 しかし、これは野球というゲームもまた勝利を目指して戦われるものである限り、奇妙である。なまじ同点に追いついて、延長線に引きずり込んでも2対3で負けては韓国の本選出場が決まってしまう状況であった。この時点で日本にとって得点をするよりも失点を防ぐことが重要になっていたのである。

 これが、たまたま0対0または1対1で、9回の裏の台湾の攻撃を迎えていたらどうであったか? 台湾が1点とれば台湾のサヨナラ勝ちである。日本の投手が打者を敬遠し、牽制球の暴投やボークなどを故意に行えば、日本の五輪出場が決定してしまう。日本が目指すのは勝利ではなく、五輪出場が至上命題であれば、これが合理的な選択である。この時点で日本が恐れるのは走者をおいてサヨナラホームランが出て2点差以上で失点することだけである。スターティングメンバーの直前の変更などもあったこの大会で、このような選択をするチームがないとは言い切れないだろう。

 実際にこのようなことにならなくて何よりであった。このような状況になれば野球そのもののあり方が問われるであろう。つまり、五輪出場をかける選定基準がおかしいのである。このような状況を避けるために単純に得失点差などの基準を設けるべきであろう。せっかく熱戦に水を差すような基準は、妙な事態を招かないうちに改正するべきである。

(H19/12/19記)


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