☆ 代用品に過ぎないIP電話を主力商品とする公益企業NTT ☆

里見哲

 東西NTTのIP電話に障害が発生しているという。原因は不明である。NTTは光電話と銘うち、デジタル通信時代の最先端商品として売り込んできていた。アナログからデジタルへ、技術は進歩し、利用者は、日々格安な料金でインターネットやメールを使いこなせるようになった。同時に画像送信もより鮮明となった。人々は当然のことながら、アナログ方式よりデジタル方式のほうが優れていると思い込んでいる状況である。

 アナログ放送からデジタル放送へ、アナログ録音からデジタル録音へ、確かに品質は向上している。しかし、電話に限って言えば、デジタル技術を利用したIP電話は、現時点ではアナログ電話の代用品でしかない。だからこそ安いのである。交換機を経由して、利用者同士を実回線で結ぶアナログ電話に比べ、IP電話は、実際の声を細かく分割し、あいた回線に次々束にして送り、対話者に一度分割した声を統合して伝えるという方式である。品質の安定性から言えば、現時点の技術では旧来の交換機経由に劣るのである。

   このようなことは通信関係者では常識になっているにもかかわらず、NTTは最先端技術をイメージにして顧客に販売しているのである。確かにIP技術の発達は目覚しい。文字情報、画像情報などはIP技術で無理なく送れる時代となっている。各家庭は、光回線1本で放送、通信など全て外部とのコミュニケーションが取れる時代に入ってきている。しかし、IP技術が一番苦手なのは、連続する音声の伝達にある。今の技術では、音声もようやく実用に耐える状況となったというのが本当のところだろう。あくまでもIP電話は、音声も通るという程度のものなのだ。

 情報化時代とは通信という独自分野が消失する時代ということである。全ての情報がデジタルで送れれば、大容量回線が安価に建設できる現代、通信にかかわる費用は低減し続けるのである。今回のIP電話騒動は、情報化時代に廃れるはずのNTTの株を、有望株と煽り立てた状況の再現である。NTTの販売戦略はその点、お客に充分告知していたのだろうか。そもそも単品のサービスを売るというのが、何でも0と1の符号にして送るデジタル通信時代では異常なのである。NTTの存在理由とされている公共性が今問われている。

(H18/10/25記)


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