☆ 巨人の凋落と地上波民放 ☆

里見哲

 地上波民放局の巨人戦放送中止が報道されている。視聴率が低迷していることが理由という。 視聴率が落ちたといってももともと20%程度あったものが10%前後になったという話だろう。たとえ5%になったとしても、日本全体で何人の人達が視聴しているのか考えたことがあるのだろうか? これだけの人が見てくれれば、地方局や衛星放送の担当者なら飛びあがって喜ぶだろう。限られた電波利権にぬくぬくとしている東京の放送局は全くスポイルされていると言って良い。東京MXテレビはヤクルト戦全試合放送で視聴率を稼ぐチャンスである。

 高校野球の出場チームは、全国で4千校を超える。WBCの盛り上がりをみても、野球は何と言っても人気ナンバーワンのスポーツである。3月の終わりから9月まで、7時から9時までのテレビ野球放送は、ひとつの文化であったのではないのだろうか? 今やサッカーの興隆、巨人の低迷などがあり、視聴率が下がるのは当然である。既に現在、巨人ファン以外は、衛星放送やケーブルテレビで自分の贔屓チームの試合をテレビでみているのである。最近、試合の途中で地上派の野球中継を打ち切っても以前より抗議されないのは、熱心なファンは衛星放送等で続きを視聴できるからに過ぎない。しかし現時点では、手軽に見られる民放のプロ野球中継がなければテレビを見ないという人もまだまだ多い。

 TBSは横浜ファンが地上波で見られる数少ないチャンスを減らし、フジテレビはヤクルトファンの楽しみを奪う。両チームのファンは巨人戦だけ見られないということもありうるだろう。民放局には、巨人戦と視聴率のみが関心事であって、プロ野球ファンの裾野を広げたり、魅力を紹介したりするという考えはないのである。長い目で見れば、自らが優良コンテンツを陳腐化させるという結果を招く。

 規制に守られてきた地上波民放局がこの世から消え去っても惜しむものはない。しかし、地上波テレビから野球が消えるとき、それは野球そのものに影響を与えるだろう。大相撲が現在まで続いているのは、NHKの放送のお陰である。民放局は試練の時代を迎えるが、一体どのような将来像を描いているのだろうか?

(H18/7/23記)


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