☆ 教育の破綻を示す官房長官発言 ☆

里見哲

 自民、公明両党の教育法改正検討会は、愛国心に関わる表現を「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」とすることで合意した、という。同法の改正について安倍官房長官は今年2月、ライブドアの堀江貴文前社長が逮捕された際に、「やっぱり教育の結果だ」として、「教育基本法は改正しなければならない。『国を愛する心を涵養(かんよう)する教育』をしっかり書き込んでいきたい」と語った、と報道されている。この発言を聞くと確かに日本の教育は破綻しつつあることが分かる。まさに正論である。

 安部長官の所属する自民党は、前回の衆議院選挙では、教育の失敗例である堀江氏を応援していた。落ち目になったとたんに、それまで持ち上げていた人を貶すのが、日本の伝統、文化なのかもしれない。堀江事件の問題点は、何事も規制緩和、市場原理主義を正しいと論じ、新時代の旗手として堀江氏を煽っていた周囲の人たちが無責任であったということだろう。さらに言えば、堀江氏の問題を教育が原因であると断定するのは、ロジックとしても唐突すぎるだろう。安部長官は、戦後の民主教育のため、道徳心も論理的思考能力も充分に育たなかった可能性がある。

 なぜ安部長官は、教育の失敗例として、同僚である代議士や西武などの名門企業経営者の例をあげずに、若手の堀江氏を槍玉にあげたのだろうか。あるいは自分達が就職先を準備できないために生じているフリーター、ニート問題を嘆く大人達の無責任さを教育の失敗例にあげても良かった。日本の教育がこのままでは、ノーブレスオブリージとか責任という言葉は死語になってしまうだろう。

 この無責任の時代、なんと現行の教育基本法第1条には、「責任を重んじ」と明記されている。つまり教育基本法の文言など個人個人の実生活にはほとんど影響しないのだろう。安部長官は、教育の失敗例として、ご自身の例をあげれば国民の信頼を勝ち得たであろうに、残念なことである。民主党永田前衆議院議員の問題とあわせて考えると、今の教育に必要なのは、年寄りに席を譲るとか、約束を守るといった道徳教育の強化、論理的思考を養う授業の拡充、メディアリテラシー教育の3点に加え、名門企業の経営者や代議士に対する責任感の醸成ということではないのだろうか。教育基本法の改正の前に、大人達に欠けているものを確認することが重要であろう。それが日本の伝統と文化を尊重するということである。

(H18/4/17記)


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