☆ がんばれホリエモン ☆

里見哲

 ホリエモンことライブドア堀江社長が逮捕された。堀江社長に対する評価はともかく、興味深いのは、周囲の反応だ。それこそ御里が知れると言っていい。例えば、業務提携したフジテレビの会長は「不正を知らずに出資をした。訴訟も検討している」とコメントしたと報道されている。当然訴訟しなければ周りが収まらないことは確かだ。業務提携先企業のことを「知らずに」というのは株主から見れば無責任極まりない発言である。少なくとも「提携にあたり詳細な調査をしたが不正を把握できなかった」と言うべきだろう。他人事ではない。当事者意識を欠いている発言である。企業家倫理の破綻という点では、ホリエモン一人の問題ではないようだ。

 多くの人達が「お金で人の心がかえる」という堀江社長の言葉を引用し、逮捕されたあとになって、「傲慢だ」、「間違いである」と、したり顔で非難している。こんな下らない言葉が間違いであることは良識ある人にはとっくに分かっているはずだ。むしろ堀江社長が知名度向上、話題提供のために作り上げたキャッチコピーに、今まで周囲が便乗してはやし立てていただけだろう。ついでに言えば、「いくら誠意を尽くしても人の心をつかめないこともある」というのもまた間違いではあるまい。

 一方、中高年を中心に、堀江社長逮捕の知らせに喜んでいる人たちも多い。汗水流す人たちが報われる社会こそ望ましい。これまた同感である。しかし、堀江社長たちは、自分たちが人々の手本になろうとして行動していたわけではないだろう。あくまでもビジネスチャンスの拡大、利益向上を目指していたに過ぎない。かれらを「勝ち組」と祭り上げた一部マスコミ、選挙に利用した自民党、首相、堀江社長とのトロイカ体制で改革を推進するとのたまった竹中大臣たちが、彼を英雄にしたてあげたというべきだろう。小泉首相は「マスコミも持上げた」と言ったが、マスコミが持上げたから、自民党が利用したということだろう。これは「五十歩百歩」の例として辞書に載せるべきかもしれない。中高年が喜んでいるのは、これらの論調が変わることを期待しているからこそである。

 かつて既得権益の上に胡坐をかいて汗水をたらさず収益を上げ続けていた人たちがいた。また既得権益を有していながら、規制緩和を唱え、自らの権益をさらに伸ばそうとしている既存企業のトップも散見される。少なくともホリエモンは、生産的活動でもなく、不正の疑いも強いものの、自分の体を張って、ピエロとも見えるような行動までして自社株の上昇を図ったのである。これに対し、ホリエモンをあおった人たち、人寄せパンダに使った人たちは、別に汗水を垂らしたわけではない。多くの人が堀江社長を非難している今、より巧みな人たちが、汗水も垂らさず、体も張らず引き続き利益をむさぼり続けていることもまた問題である。ホリエモンが一回り賢くなって、正攻法で再び立ち上がる姿が見たいものだ。そのときはじめてホリエモンの真価が分かるだろう。がんばれホリエモン

(H18/1/26記)


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