☆ 秋のクリスマスツリー ☆

里見哲

 ここ数年、街角で11月の初めからクリスマスのイルミネーションを見かけるようになった。周囲の並木が葉を散らす前の時期のクリスマスツリーは惨めでさえある。秋口に聞く風鈴の音に匹敵するような感じである。紅葉が遅くなった分、クリスマスツリーが早くなったのだろうか。

 最近は、日本でもハローウィンに関わる各種のイベントが行なわれるようになったが、まだ根付いているとは言えない。デパートなどが秋のキャンペーンとして展開しているに過ぎないといった状況である。そして、10月31日のハローウィンが終ると次のキャンペーン「クリスマス」の到来ということになる。11月初旬のクリスマスツリーは、キャンペーンを中断させないために行なわれているのである。

 しかし、相応しい時期に、時期を限って集中的にやるのがそもそもキャンペーンではないのか。このようなやり方では、折角のイベントを日常に埋もらせてしまうのではないか。それとも高価なイルミネーション用品を一日でも長く使わなくては勿体ないと考えているだろうか。確かにクリスマスが終ると、すぐ正月だから、クリスマスキャンペーンを後ろにずらすことはできない。いずれにしろ、秋からクリスマスツリーを飾るような店の人達は、季節の移ろいを楽しむという心も、効果的な販売促進を行うという頭脳も共に貧困だと言わざるを得ない。

 四季折々を楽しみ、キャンペーンの材料を探すのなら、11月には七五三もあるし、酉の市もある。米国の感謝祭のように勤労感謝の日が定着していないのが原因かもしれないが、工夫する余地はいくらでもあるだろう。

 2月14日のバレンタインデーは、春を直前に控えてというタイミングもあって、定着したのだろう。節分の日に巻き寿司を食べるという新しい動きも、豆だけ食べてもお腹かが膨れないから受けているのだろう。新しい伝統の創造者は、頭も季節感も人並み以上だとういうことだ。11月の初めにクリスマスツリーを飾り付けて、季節感の破壊にいそしんでいる人達の頭には一体何が詰まっているだろうか。

(H17/12/4記)


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