☆ 競争原理は、喫煙撲滅という社会正義実現の敵なのか ☆


里見哲


 現在、万人にとって願いは戦争撲滅と喫煙という習慣の撲滅である。この5月から関東地区の大手私鉄8社が一斉に駅構内を全面禁煙とした。最近元気のない日本企業としては、大英断である。各社経営者に深く敬意を表したい。各社横並び、談合もこのようなことでは大歓迎である。どんどんサービス向上のための談合をやってもらいたい。

 この私鉄8社の大英断は、日本の良識を代表する大新聞のコラムでも高く評価されていた。いわくサービス競争、自動改札、料金値下げなど、常に関西の私鉄各社に遅れをとっていた関東の私鉄もようやく関西の私鉄に一歩先んずる先見性を見せたと賞賛されている。

 そして、関西の私鉄も関東の私鉄を見習って、全面禁煙を実施し、顧客サービスを向上させるべきであるとし、最近関西経済全体が元気でないが、このようなところにも、その元気の無さが出ているのではないかと懸念している。

 だが、その分析は妥当だろうか。何も元気のないのは、関西経済だけではないだろうし、逆に阪神タイガーズは、横浜ベイスターズより元気だし、たまちゃん以上に多くの人々に勇気をあたえているノーベル賞受賞者田中さんの属する島津製作所は、関西に本拠地を持っている。関西が特に元気がないとも思えない、とすると原因はほかにありそうだ。

 関西では、京阪間では、京阪、阪急、JRの3社がしのぎを削り、阪神間では、阪神、阪急、JRの3社がひしめいている。京阪のテレビカー、JRの新快速、阪急特急、どれもクロスシートの快適な座席を有し、所要時間、料金水準とも顧客ニーズに答えている。つまり、関西の私鉄は、顧客獲得のため、サービスの向上に関東以上に努めてきたということだ。

 様々な顧客ニーズに答えるための努力が、関東の私鉄と関西の私鉄の施策の差となって表れたのが、今回の禁煙の措置であろう。関西の私鉄は、競争が激しいからこそ、社会正義達成という機会で遅れをとってしまった。関西の私鉄が、今後、分煙装置を設置し、喫煙者に対しての顧客サービス向上に努めるのか、それとも遅れをとりながらも社会正義を達成するのか、注目したい。

 
(H15/5/15記)


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