☆ 賽銭が犯罪を呼ぶ現代社会 ☆

里見哲

 賽銭を2円盗んで起訴された男がいると報道されている。ここで問題にしたいのは、盗まれた賽銭の金額ではない。人々の善意や願いが込められている賽銭が、犯罪の誘引になってしまっていることだ。

   このお寺は、賽銭泥棒を防ぐために防犯カメラを設置していたという。賽銭を使ってモニターカメラを購入したようなものである。もしかしたら、神様や仏様は、カメラ購入に賽銭を使うより、賽銭が生活困窮者のために使われることを望んでいるかもしれない。

 誰でも入れる境内に、無防備な賽銭箱を置き、モニターカメラで監視するということは、心弱き者を犯罪行為に走らせたうえで、捕まえるという罠のようなものではないか?むしろ、境内の出入りを厳重に管理し、賽銭箱を厳重な金庫のようなものにして、防犯対策を整え、場合によっては領収書を自動発行するくらいの仕組みが現代社会にとって相応しい気がする。

 ミリエル神父は、ジャン・バルジャンが盗んだ銀の燭台を見て、それは差し上げたのだと警察官に答えた。人々の願いが込められた賽銭が犯罪を生むような社会は異常である。2円で起訴されたことから分かるように、検事は、ジャベールのような厳格な人もいるようである。現代日本に必要なのは、「その2円は、容疑者に差し上げたのだ」といえるミリエル神父に匹敵する高邁な宗教家か金庫型の賽銭箱の普及である。

(H17/11/12記)


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