里見哲
プロ野球再編問題が世間を騒がせている。球団経営者は、自分達の保身のため、巨人戦を1試合でも多く実施したいという共通の目標を掲げ、パリーグの球団は、球団数減を、セリーグの球団は、1リーグ阻止を目指しているのだろう。そこには、プロ野球をどのように発展させるかという視点は皆無である。バブルの崩壊、規制緩和の進展により、旧来型の経営者は淘汰されつつあるが、プロ野球の経営者の意識改革は全く進んでいなかったようだ。 バブル崩壊後、外資系の投資ファンドをハゲタカファンドと呼び、恐れおののいた時期があった。いわゆるハゲタカファンドは、日本の伝統ある企業を買いあさり、利ざやだけを奪い取り、営々と気づきあげた日本企業のノウハウ、文化を滅ばせてしまうと恐れられていた。日本の伝統、文化を壊す外国産の悪い奴がハゲタカファンドだったのだ。 しかし、ハゲタカは、果たして外国産ばかりなのだろうか? 今回の合併劇は、数々の名勝負を演じつつ、決定的な瞬間に必ず敗れ去っていた歴史と伝統のある球団を安易な形で、消滅させてしまうということではないのだろうか。産業構造の変化により企業が衰退するのはやむを得ない。しかし、球団経営は、何の利害関係のないファンの心に頼ってなりたっている文化事業でもあるはずだ。 合併の一方の当事者である球団の親会社は、社名変更時に球団経営に乗り出し、その知名度を全国区のものにした。その後日本一になり、親会社のブランド価値を大幅に上昇させた。この会社は、球団への投資のもとが充分とれているはずである。かくして目的を達したこの球団は、本人の希望に沿うという形で、超一流選手を大リーグに売却したのをはじめ、FAによる選手流出を野放しにし、経済的効率のみを追求し、今や万年最下位のありさまとなっている。スター選手を売却し、多くの人に愛される球団を消滅させようとしているこの球団および親会社の振舞いは、ハゲタカと大差がないのではないだろうか。 噂によると、この親会社の会長は、規制改革・民間開放推進会議なる団体の議長を務め、規制改革が持論の立派な方のようである。それにもかかわらずライブドアなどの新規加入を認めようとせず、球団を減らそうとするのは一体なぜなのだろうか。まさか最終的に1球団にして独占利益を享受することが目的ではあるまい。紅白戦しか行えないプロ野球など、いくらおとなしい公正取引委員会やなぜ大任を引き受けたのか分からないコミッショナーですら認めないだろう。かれが旗を振る規制改革なるものは、自社側に都合のいいところだけ対象としているのだろうか。逞しいと言えば大変逞しいが、それでは、ハゲタカと呼ばれても致し方ないのではないだろうか。 確かに弱肉強食の時代、逞しくなければ、球団経営も覚束ないだろう。願わくは、その逞しさをチームの文化としても持ってもらいたいものだ。ブラッシング・ボールや、スパイクを上げての滑り込み、ボールへの小細工とかもやってみてはどうだろうか。あるいは、5回までにリードしていれば、停電にしてコールドゲームにしてもよい。チーム名は、ヴァルチャーズ(ハゲタカ:vultures)以外は考えられない。そのチームカラーは、プロ野球界に旋風を巻き起こす可能性がある。 さらにダイエーに再生機構が支援をするのなら、いっそのことダイエー球団も支援し、「福岡再生機構フェニックス」としてはどうだろうか。宮崎もフェニックスなので、九州をフェニックスランドと改称してもいいだろう。カムバック賞を取った選手や、大リーグ帰りの選手は、すべてフェニックスに入団させればいいだろう。ハゲタカと不死鳥の争いは、話題性充分である。このような戦いは、ハリー・ポッターでも見られない。往年のプロレス人気のようである。もしかすると、プロ野球は、ハゲタカの力で再生できるのかもしれない。巨人に代わる球界の盟主は、規制緩和の盟主が親会社の会長を勤める関西ヴァルチャーズ以外にはなく、全力で応援したいものである。がんばれヴァルチャーズ。 |