「日本の良識」参議院の議員を手本にしよう

里見哲

 平成15年度、日本における自殺者は、5年連続で3万人を超えた。一年間の交通事故による死亡者は、約7千人だから、いかに多くの人たちが自ら命を絶っているかが分かるだろう。かつて交通戦争という言葉があったが、今や日本は自殺大国と言ってもよいくらいだ。

 遺書を残している人たちによる自殺の動機のうち、経済・生活的な問題35.2%、仕事上の理由5.9%という数値が目を引く。数年前まで経済大国と呼ばれていた我が国の凋落を示しているのかもしれない。この自殺者の数値を見て、財務大臣や厚生労働大臣は、いたたまれない気持ちになっているに違いない。繊細な大臣であれば、まさかとは思うが、自殺してしまう可能性すら否定できないだろう。

 一体、自殺者を減らすのには、どんな方法があるのだろうか。ここでほのかに光を投げかけているのが、日本の良識と称されている参議院の議員の方々の奮闘である。倉田前参議院議長は、申告以上の十四億円の負債があるという。それにも関わらず立派に議長を勤め上げている。経済的理由で、自殺した人たちも14億円以上の負債があった人はそれほどいないだろう。この程度の負債で死ぬ必要はないことを前議長自らが示していること自体、日本の良識を代表していると考えるべきだ。問題は、「しんこく」ではないのだ。

 一方、青木前自民党参院幹事長は、参院選で敗北したにも関わらず、自民党参議院会長の要職に就任した。少しくらい仕事に失敗しても、あるいは職場で周りから批判されても全然気にする必要がないことを、我々国民に示そうとがんばってくれている。これは自殺大国にあっては崇高な行為と言ってよい。誠にいい手本である。

 参議院の必要性を否定する動きが一部ではあるが、この自殺大国日本にとっては、由々しき考えである。国民は、参議院の方々を手本とし、経済的困難や仕事上の問題に打ち勝っていかなければならない。日本に参議院がある限り、100年くらいたてば自殺者が減少する可能性もゼロではない。苦しいときは、倉田、青木両氏のことを思い、気をとりなおさなければならないのであり、これこそ国民の務めである。自己責任の遂行なのである。

(H16/8/5記)


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