環境に優しいとPRする前に
〜真夏の昼の夢〜

里見哲

 酷暑が続いている。昼間、外を10分歩くだけで汗だくになってしまう。この暑い中、背広を着たり、抱えていたりする男性がいるのを見ると、気の毒を通り越し、愚かなかんじさえする。ある調査によると、半分以上の企業が、外部と接点のある担当者には、背広の着用が必要と回答しているようだ。このような有様では、リストラに怯えるサラリーマンたちが酷暑でも背広が手放せないわけである。

 逆に、平日、軽装で外出すると、電車やビルの中で冷房が効きすぎて鳥肌が立つことすらある。恐らく背広を着た男性を対象に冷房の温度を調整しているのだろう。地球温暖化防止、電力消費量の抑制からみて時代に逆行することもはなはだしい現象である。冷房の温度から判断すると、未だに日本は、男性上位社会であり、環境より見てくれを大切にしているとしか思えない。

 大変滑稽なのは、真夏に平気で社員に背広を着せているような企業が、イメージの向上のために「環境に優しい」という陳腐なフレーズでPR活動に務めていることだ。真夏に背広の着用を放任し、結果として社員の体力を消耗し、公共スペースにおける行き過ぎた冷房の使用を招いている企業が、「環境に優しい」とは言えないだろう。少なくとも「環境に優しく、人に厳しく」と言ってもらいたいものだ。

 雨が降ったら、傘をさせばいいように、暑かったら背広を家に置いておけばいい。企業も会社員もこんな簡単なことができないようで、世の中が本当に暮らしやすくなるのだろうか? その企業が本当に「環境に優しく、社会貢献を重視」しているかを見るためには、社員が真夏に背広を着ているかどうかで確認してはどうだろうか。当然各企業の出している環境報告書にも夏季の背広着用状況を記載するべきである。

 酷暑期の背広の着用の廃止は、地球温暖化防止にも貢献できるはずである。確かに「焼け石に水」程度の効果しかないのかもしれないが、それでも「焼けたアスファルトに背広」よりはずっと益しであるはずだ。   

(H16/7/20記)


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