☆ 神聖な選挙ポスターを侵すものは誰だ? ☆


里見 哲


 伝統ある日体大ラグビー部の部員が横浜市議選のポスターを破損して逮捕されたというニュースが報道されている。全く気の毒である。民主主義の根幹に関わる選挙活動を妨害したのだから、厳罰も当然であるというのは、正論であろう。それは「お父さん、お母さんを大切にしよう」とか、「戦争反対」と同様に疑いもなく正しいものである。立候補者の活動、表現の自由を暴力によって妨害したのだから、ゆゆしき事態である。

 それにも関わらず、この二人の若者に同情せざるを得ない。深夜に騒ぎ、住民に不安を与えたのだとしたら、逮捕もやむを得ないのかもしれないが、かれらは、お上からお墨付きを貰っている掲示板に張ってあったポスターを破いたから捕まったのであり、違法にそこらじゅうに張ってある党首と並んで笑顔を見せている候補者のポスターを破いていたら、捕まらなかったであろう。つまり運が悪いということだ。

 この若者二人を捕まえるのなら、違法にポスターを貼っている候補者たちも逮捕するべきではないのだろうか。それとも町に氾濫しているポスターは違法ではないのだろうか。もし違法でないのだとすれば、選挙管理委員会が管理している掲示板だけが、聖域であり、あそこに張ってあるポスターだけは、いかなるものからも免れるということなのだろうか。もちろん、意図的に特定の候補者のみのポスターを破るのは、民主主義に対する挑戦であるが、酔っ払って見境も無く破ったのでは、特定の候補者のための活動とも言えまい。

 民主主義の根幹に関わる行為であるだけに厳罰に処すという考えは分からないでもないが、それであれば、違法なポスターの掲示も取り締まるべきであろう。もっとも、違反している候補者に投票している人たちこそ民主主義を脅かしているように思える。更に言えば、それでも取り締まらない選挙管理委員会や棄権する人たちよりは、一応投票するだけまともだとも言えるのだが。選挙管理委員会には、掲示板のうえに「この掲示板のポスターを破る人は、民主主義の敵として罰せられます」と目立つように書くことを強く要望したうえで、若者二人の情状酌量を求めたいものである。寛容もまた民主主義の特質であると思うからだ。それはそれとして、新聞を見ると投票前に都知事選の当選者は決まってしまったようだ。一体13日には誰に投票すればいいのだろうか。

(H15/4/7記)


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