☆ 株価 ☆

井出薫

 株価が高騰している。23年に3万円を突破してからわずか3年で7万円を超えた。高騰の牽引者は半導体関連で、キオクシアはトヨタを抜いて時価総額で一位になっている。半導体製造装置で世界3位の東京エレクトロン、半導体の自動テスト装置で世界一を誇るアドバンテスト、電子部品で世界トップクラスの村田製作所も時価総額でトップ10にランクインしている。いうまでもなく背景には世界的なAIブームがある。AIとデータセンターに莫大な投資を行うソフトバンクグループもキオクシア、トヨタに次いで時価総額3位に位置している。政策金利引き上げで業績向上が期待されるメガバンク3社、中国での事業が好調なファーストリテイリングも高い(6月24日現在)。一方、3年前は時価総額の上位を占めていたNTTなどメガキャリアは順位を大きく落としているが株価自体は下がっていない。

 この勢いはいつまで続くのか、実体経済を反映した数字なのか、これが気になるところだ。80年代後半バブルを招いた日本は90年代に入りバブルが崩壊し30年に亘るデフレに悩まされグローバル市場で日本企業のシェアは大きく下がった。同じことが起きるのではないかと危惧する者がいるのは不思議ではない。しかし、現時点ではバブルになっているとはいえず、短期的な揺り戻しはあっても長期的には株価が上昇する可能性が高い。AIの普及はこれからも続きAIバブル崩壊の可能性は低い。

 80年代後半は明らかにバブルだった。時価総額世界一位はNTTで、時価総額トップ50の半数以上を日本企業が占めていた。しかし、今は国内トップのキオクシアですら57兆円弱に過ぎない。米国の株式市場では1兆ドル(約160兆円)を超える企業が10社以上存在する。トップのNVIDIAに至っては4兆8千億ドル強で円換算すると約770兆円になる。米国以外でも韓国のサムスン、台湾のTMSCなどが1兆ドルを超えている。NVIDIAなど世界の時価総額上位と比べるとキオクシアの収益と利益が低いのは事実だが、時価総額にこれほど開きが生じるほどの差はない。キオクシアに限らず、海外の投資家からすれば、日本企業の株価は円安も手伝い依然として割安感がある。それゆえ、海外からの買いは今後も続くことが予想される。国内でも定期預金の利率が物価上昇率を下回る状況が続いており家計の金融資産が株式や投資信託に流れることは必定で株価を押し上げる要因となる。高市首相のプライマリーバランスに拘らず経済成長を実現しGDP比での国債発行額比率を下げるという責任ある積極財政策も株価の押し上げに一役買っている。

 株価高騰は日本経済の復活を示唆する良い兆候であり、またその原動力となりえる。課題はそれを継続的な経済成長に繋げ国民生活を改善することができるどうかだ。そのためには、日本企業がグローバル市場でシェアを拡大し大幅な賃上げが継続する必要がある。果たしてそれが可能かどうか。現状では何とも言えない。
(注)26日、株価が3千円下がり7万円を切ったが一時的な揺り戻しに過ぎないと考える。


(2026/6/27記)


[ Back ]



Copyright(c) 2003 IDEA-MOO All Rights Reserved.