☆ 教育基本法14条 ☆

井出薫

 文部科学省が同志社国際高校を教育基本法14条2項「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」に違反していると認定し、改善するよう行政指導をした。

 同志社国際高校が安全管理上の不備で、生徒の尊い命を奪うことになった責任は重い。その点で同校には大きな咎がある。しかし同校が教育基本法14条違反に該当するという文部科学省の認定の妥当性には疑問がある。

 辺野古への基地移転には賛成、反対がある。同校はもっぱら反対派の意見をとりあげ反対運動への参加を訴える資料を生徒に示し、政府の見解や賛成派の意見を生徒に示さなかったというのが14条違反と認定した理由だと文部科学省はいう。しかし、反対派に共産党や社民党が深く関与しているからと言って同校の平和教育が「特定の政党を支持するための政治活動」に該当するとは言えない。同校は共産党や社民党への支持を推奨した訳ではない。一部に両党を支持する教員がいたとしても、学校として両党への支持を表明することはなかった。また学校の影響で生徒が共産党や社民党の支持者になったという事実も見当たらない。それゆえ条文の解釈として行き過ぎた拡大解釈だと言わなくてはならない。

 多様な意見がある事案については様々な意見を公平に紹介することが望ましい。しかし、辺野古への移転の必要性を訴える政府の見解は報道などを通じて広く知られており、反対派の意見だけを平和教育の中で取り上げたとしても、それをもって政治的中立が損なわれていると断定するのは公平を欠く。もし、同校が反対派の意見を無視し、もっぱら政府が唱える移設の意義だけを教育現場で訴え続けていたとしたら、文部科学省は反対派の意見を取り上げていないことを理由に14条違反の認定をしただろうか。もし違反と認定しなかったら不公平と言わなくてはならない。

 教育基本法には罰則規定がなく行政処分はできない。だから今回の事案も文部科学省が行ったのは行政指導に過ぎない。行政指導は法的根拠を必要としない代わりに強制力を持たない。相手が指導に従わない場合もそのことをもって不利益(罰則等)を与えてはならないと行政手続法に定められている。それゆえ、同校は指導を無視し、これまで通りに平和教育を続けることができる。しかし今回の事案では生徒の命が奪われたことに同校に責任があることは明らかで、それとセットで教育基本法違反と認定され改善を指導されると指導に抗うことは難しい。

 教育は可能な限り政治的に中立的なものであることが望ましい。しかし、ありとあらゆる事案で全ての意見を漏れなく公平に紹介することはできない。教師が教育基本法を尊重することは義務だとしても、人間である教師の指導内容が時には偏ることがあるのは避けがたい。学校全体が特定の見解に偏っているとしたら問題だが、同校がそれに該当するとは言い難い。

 いずれにしろ、巨大な権力を有する政府に批判的な意見を政治的中立性を盾に政府が実質的に封じるようなことがあってはならない。同志社国際高校は安全管理の不備に関しては猛省し徹底的に改善する義務があるが、教育の政治的中立性については安易に政府の言いなりになるべきではない。


(2026/6/3記)


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