☆ 未来は如何に ☆

井出薫

 身勝手な関税とイラン攻撃、トランプ米国大統領の行動は世界を震撼させている。しかしトランプの支持率は下がっているとはいえ依然30%を超えている。外から見るとなぜこのような高い支持率を得ることができるのか不思議に感じるが、それが現実だ。

 現代社会は百年前と比べれば格段の進歩を遂げている。経済発展と科学技術の進歩は目覚ましく、人々の生活は格段によくなっている。百年前は治安維持法で共産党など反体制政党が非合法化され、女性に選挙権が与えられていなかったことを思い起こせば、政治的自由や平等、人権など社会制度の面でも明らかに進歩している。ここから、紆余曲折はあっても人類は進歩しており、未来は今より良くなるという楽観論が出てくる。

 だが、近年の動きを見ていると、進歩が停滞し寧ろ退行しているのではないかと危惧せざるを得ない。科学技術の進歩で兵器は限りなく破壊力を増し、AI制御の無人機で自律的に他国を正確に攻撃することも可能となっている。一方で人類の進歩を支えてきた化石燃料の大量消費が地球環境を破壊している。紛争や環境を始めとしてあらゆる社会問題がグローバルな問題として現れ世界各国の協力協調が不可欠となっているのに、トランプやプーチンロシア大統領のようなエゴイズムの塊のような人物が国際政治を左右していて、国際協力が進まず国連も形骸化し求められる役割を果たせないでいる。もしかしたら、人類のピークは20世紀末か21世紀初頭で、これからは転落の一途になるのではないか?経済と科学技術だけは拡大し続けそれが却って人間社会の荒廃を助長することになるのではないか?こんな陰鬱な予感すらする。

 二つの大きな問題がある。一つは米ロ中という超大国の行動に歯止めを掛ける手段がないこと、もう一つは議会制民主主義が十全に機能していないことだ。最初の問題は国民国家を統制する超国家的組織が実質的に存在していない、それを構築する術が現時点では存在しない、構築する術を想像することすらできないことに起因する。後者は、選挙民に正確な情報が十分に提供されていない、選挙民に適切な選択をする能力が欠けている、誤った選択を是正する仕組みがないことに起因する。結果的に、国家間の統制も、国内の民主的統制も機能不全に陥っている。

 「絶望は愚か者の結論」という言葉がある。筆者もそうであることを望む。だが楽観は禁物だ。悲観的な見方にも一理あることを知り、よりよい未来を慎重に模索していく必要がある。


(2026/4/3記)


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