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井出薫
ソフトバンクグループの孫正義社長がトランプ大統領に5千億ドル(80兆円弱)の投資を約束した。失敗に終わる公算大だが日本製鉄は2兆円掛けてUSスチールを買収し米国で大規模な投資を計画している。金融機関は米国など外国企業を投資先とする投資信託を顧客に推奨している。こうして日本の資金が海外へ大量に流出している。 企業、金融機関などが高い利益が期待されるところに投資するのは当然で、孫社長や日本製鉄、金融機関を非難することはできない。より多くの利益、配当や譲渡益を得てそれを顧客や株主に還元するのが企業の使命だからだ。しかし、こうした動きが常態化すればただでさえ弱くなっている日本の産業競争力、科学技術力が一層衰退することは間違いない。そして、それは市民生活の安定と利便性を損なう。 民間が日本に投資せず海外に資金が流れている現状、流れを変え日本経済を立て直すには政府が大規模な投資をするしかない。ところが、財政赤字の影響で財政出動が中途半端になっている。かつて小泉政権は構造改革で日本経済を活性化しようとした。構造改革で成長産業への労働力の移動を促し経済成長を実現するという目論見だったが見事に外れた。それもそのはず、日本にはGAFAM、サムスン電子、TSMCのような大量の労働力を吸収できる急成長企業がない。だから労働力の移動など起きない。結果、小泉構造改革は非正規雇用を増やすだけに終わった。アベノミクスでも同じことが言える。世界に冠たる急成長企業と産業を生み出さない限り、構造改革も異次元の金融緩和も効果は乏しい。そういう企業を生み出すには資金が必要だが民間の資金は挙って海外に流れている。それゆえ政府がプライマリーバランスの黒字化に固執することなく成長が期待できる分野に積極的に投資する必要がある。 こういうと、大いに投資していると政府は反論するだろう。確かに国家予算には半導体、ポスト5G、宇宙戦略基金などに大きな金額が並んでいる。だが、金額的に十分とは言えず、またその資金を如何に使うかに合理的な戦略が欠けている。半導体、IT、AI、宇宙、バイオ・医療、量子技術、環境技術など多くの最先端分野で日本は米国、中国など諸外国に大きく後れを取っている。予算を付け資金を投じるだけでは差を埋めることはできない。そもそもすべての最先端分野でトップに立つことなどできるはずもない。それゆえ、合理的で効率的な研究開発体制の確立、高等教育の在り方の見直し、博士や女性研究者の大幅な待遇改善、海外からの人材の招聘、若手の意見が積極的に取り入れられる組織づくり、有望な分野や企業を選別する合理的な基準と運営組織の設立など総合的な戦略が必要となる。そして何より全体を取り仕切る有能なリーダーと組織が欠かせない。各省庁とその傘下の組織が予算の分捕り合戦をしているようでは投資は無駄金に終わる。 了
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