☆ 選択的夫婦別姓 ☆

井出薫

 選択的夫婦別姓に関する議論では、男女平等、特に女性の権利保護という観点から議論されることが多い。だが、選択的夫婦別姓は男性にとっても好ましい。

 国家資格の中には旧姓が使えないものがある。旧姓を使っている男性を当該資格の資格者として行政へ登録または届出が必要な場合、事情を知らない者から問い合わせや質問がきて社内外で混乱をきたすことがある。法律的には婚姻に当たって男女どちらの姓を選択するか自由なのだが、たいていは男性側の姓に合わせる。だから女性の姓に合わせた場合は余計な詮索をされて迷惑することが多い。それゆえ選択的夫婦別姓は男性にとってもメリットが大きい。

 自民党タカ派など反対勢力は、夫婦同姓は日本の伝統であり、それを変えれば家族の一体性が失われると主張する。だが、そもそも家族の一体性を強調することが戦前の家父長的なシステムを温存し妻と子供たちの自由を制約してきたことを忘れるべきではない。夫婦も親子も平等でなくてはならない。近年、夫が自分の親の介護を妻に押し付けたことが離婚の原因になる事例が増えている。これなども家父長的な意識が夫に残っていることの現われと言える。選択的夫婦別姓が確立すれば、こういうことが解消され、夫の親の介護に妻と子供たちが、妻の親の介護に夫と子供たちが協力するという公平な体制が確立され、却って家族の一体感は増すだろう。男女平等の時代、時代遅れな伝統に拘るのではなく、新しい時代に相応しい伝統を確立する必要がある。自民党の次期総裁には党内の反対派を抑えて選択的夫婦別姓の法制化を進めることを期待する。


(2024/9/1記)


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