☆ けじめを ☆

井出薫

 予測されたこととはいえ、補選で自民党は惨敗した。保守王国と言われた島根一区でも立憲民主党に大敗している。

 岸田首相は投票前の国会答弁で補選の結果は自分への評価になると発言していた。筆者はそれを聞き首相は退陣の腹を決めた、島根一区で敗北すれば退陣を表明すると予想した。ところが、そうはならなかった。

 自民党に不祥事が起きたからと言って必ず首相が交代しなくてはならないという決まりはない。だが、一連の不祥事と今回の選挙結果、報道各社の世論調査で軒並み不支持が支持を大きく上回るという現実は、岸田自民党総裁=現首相がその地位を維持することの民主的正当性が疑わしくなっていることを示している。

 さらに、岸田首相個人の責任も大きい。安部派と二階派だけではなく岸田派の会計責任者も立件されている。さらに、市民や有識者、野党から「岸田文雄総理大臣就任を祝う会」は政治資金パーティーではないかという指摘があった。これに対して任意団体が開催した会合に過ぎないと言い張っている。だが、当該会合の主催団体から300万円を超える寄付を受けており、違法とまでは言えないとしても脱法的な行為だと言われても致し方ない。もし岸田が総裁の座になければ自民党内の処分で本人も何らかの処罰を受けていた可能性が高い。

 岸田首相は退陣を表明し自民党総裁=首相としてのけじめを付ける必要がある。国会開会中に総辞職すると国民生活に悪影響を及ぼすというのであれば閉会後退陣でもよい。それでも今「閉会後速やかに退陣する」と宣言するべきだ。もし国民は未だ自分にノーを突き付けたのではないと言いたいのであれば、国会閉会時に衆院解散・総選挙で民意を問うことが求められる。筆者は憲法の本旨から首相の衆院解散権は制約されるべきであり党利党略でなされる解散は許されないと指摘してきた。だが、国会閉会後すぐに解散総選挙をするのであれば、それは党利党略ではなく、国会で多数を占め政権の中枢を担う自民党と岸田首相への信任を問う解散総選挙として憲法上も認められる。

 いずれにしろ、このままずるずると首相の座にしがみつくことは許されない。春闘による大幅賃上げなどで支持率が回復することを期待しているのかもしれないが、たとえ少しばかり支持率が回復しても不祥事の責任が消える訳ではない。岸田首相には責任をしっかりと自覚して内閣総辞職か衆院解散で民意を問う責務がある。


(2024/5/3記)


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