☆ 対応が遅すぎる ☆

井出薫

 新型コロナの感染拡大で、全数把握が医療従事者の大きな負担となっている。ところが、政府は第7波が収まったら見直すなどと悠長なことを言っている。問題は今なのだ。今、医療が逼迫し必要な人が必要な治療を受けられない、救急患者の受入れができないという状況が生じている。全数把握を止めると、感染者数、年代別の感染者数・死者数、ワクチン接種の状況などを正確に把握することができなくなる。だが、定点観測でもある程度の精度で傾向を知ることができる。いま必要なことは医療を充実させることで統計データの精度を高めることではない。全数把握はすぐに止めるべきだ。

 抗原検査キットのネット販売を解禁するという。こちらも遅きに失した感が否めない。すでに多くの非認定品の検査キットがネットに出回っている。購入した者も少なくないだろう、在庫切れとなっている商品もある。認定品の解禁は良いが、非認定品についても検査精度などを調査し公表する必要がある。だが、そういうつもりはないらしい。

 水際対策は緩和されてきたが、それでも陰性証明が必要、国・地域によっては入国時の検査が必要など様々な制約がある。日本は今や世界最大の感染流行国だ。海外から日本に新型コロナが持ち込まれるリスクよりも、日本から海外へ持ち出す、訪日した者が持ち帰るリスクの方が大きい。社会経済活動の正常化を重視するのであれば直ちに制限をすべて撤廃すべきだ。もし水際対策を続けるのであれば、出国者の検査もしっかり行い、可能な限り海外に新型コロナを輸出しないように努める必要がある。さもないと相手国・地域に失礼になる。

 新型コロナ対策だけではなく、景気対策、デジタル化、環境対策などすべての面で政府の対応は遅すぎる。どうしてだろう。おそらく失敗を恐れているからだ。確かに東京五輪前後の国民と報道の政府叩きはいささか常軌を逸していた。だから、政府は国民や報道の顔色を伺いながら対策を練っているのかもしれない。分からないではない、だが不合理なものは不合理で可及的速やかに改善する必要がある。


(2022/8/19記)


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