井出薫
感染拡大の第7波に襲われ、21日には過去最多の18万人の感染が確認された。さらに、この先も感染拡大は必至と考えられている。 政府は行動制限はしないと言っている。これまで感染拡大、規制を繰り返してきたが、新型コロナが最終的に収束する兆しはない。その一方で、重症化率と死亡率は2年前よりも大幅に下がっている。それゆえ、感染拡大、規制を繰り返すというやり方は賢明ではなく持続可能でもない。実際、欧米諸国はすでに行動制限をほぼ撤廃している。日本でも行動制限なしで波を乗り切る方法を学び、実践する必要がある。 そうは言っても、この先、感染者数が一日30万、40万と増え、重症者、死者が増大しても行動制限なしで済ませられるのか。そういう事態になれば、医療逼迫は新型コロナ以外の疾病にも及び、国民の不安も否応なく高まる。そのときは、緊急事態宣言の検討も避けられなくなる。 問題は備えが十分ではなかったということだ。感染拡大の予測は難しい。とは言え、これまでの経験や諸外国の感染状況から、今の事態は想定できた。ところが、6月に感染拡大の兆候が見えたとき、専門家会合の委員たちは驚くほど楽観的だった。第6波を超えることはないと予測する者もいた。だが、第6波を超えることは容易に予測できた。まず行動制限が大幅に緩和され海外からの旅行客の受け入れも制限があるとはいえ再開された、オミクロン株BA.5は冬に大流行したBA.1、2よりも感染力が強い、この二つの条件を考慮しただけでも、第7波は第6波よりも大きいものになることは十分に想定できる。さらに、これまで日本は欧米各国よりも感染者数が大幅に少なく、自然感染により免疫系が強化された者が少ない。ワクチンの接種率は高いが、ワクチンの効果はオミクロン株登場以来下がっている。それゆえ、欧米では行動制限なしでも比較的小さな規模でピークを越えたとしても、日本ではそうはいかない可能性が高い。韓国でも4月には一日30万人の感染を確認したときがある。日本と韓国の人口比を考えると、日本ではこれは50万人を超える規模になる。検査体制が違うとはいえ、日本でも1日50万人の感染者が出ることを想定する必要があった。だが、そういう状況で何が起きるか、そこで医療崩壊を回避するために何が必要かを真摯に議論し対策を実行したとは思えない。だから、ここにきて慌てて、ワクチンの接種対象者を増やしたりしている。最初から、医療機関や介護施設の医師、看護師、職員を対象に含めるべきだった。また、ここにきて検査キットが不足し一部では十分な検査ができない状況が生じている。これなどは感染50万人を想定していれば事前に生産や購入量を増やすことで回避できた。 言うは易く行うは難し。感染対策に正解はなく、その都度、状況に応じて対処するしかないのは分かる。だが、それにしても、毎回毎回、同じ失敗を繰り返している。これから先も、まだ新型コロナは続く。感染症法の分類変更、薬剤師によるワクチン接種など、遣るべきことはたくさんある。これまでの経験と国内外の知見を集めて、賢明で効果的な対策を実行するよう、政府関係者のより一層の努力が求められる。 了
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