☆ 夫婦別姓 ☆

井出 薫

 最高裁で別姓による婚姻を認めない法律は憲法に違反しないという判決がなされた。違憲とした判事もいたし、判決を批判する意見も少なくない。失望した者が多かったのも十分に理解できる。筆者も選択的夫婦別姓制に賛成する。とは言え、夫婦別姓を認めないことが現行憲法に違反するとまでは言えないだろう。男女どちらの姓を選ぶこともできるから男女平等には反しない。旧姓を使って仕事をすることができるから、婚姻の自由を侵害しているとまでは言い難い。筆者の周囲でも仕事で旧姓を使っている者は少なくない。

 とは言え、最高裁判決は決して夫婦同姓制度を積極的に支持している訳ではなく、国会において解決を図るべき問題としている。これは暗に国会で速やかに選択的夫婦別姓制を導入することを促しているとも言える。仕事上は旧姓を使えるとは言え、資格者証などは戸籍上の氏名を使う必要があり、名刺に記された姓と資格者証の姓の違いを顧客などから指摘されることがある。旧姓を使っている同僚の話では、説明すれば大抵はすぐに理解してもらえるが、奇異の目で見られることもあると言う。そもそも、一々説明しなくてはならないことが負担になる。旧姓を使えるから仕事上は何の問題もないという訳ではない。

 選択的夫婦別姓制は、同姓にすることを拒否している訳ではなく、当人同士が話し合って同姓にすることができる。家族の一体性を重視するなどの理由で同じ姓にしたい者はそうすればよい。つまり選択的夫婦別姓制は誰も不幸にしない。自民党内の反対派などは家族の一体感が薄れるなどと言うが、それは古い家族観を他人に押し付けようとするもので合理的根拠とはなりえない。

 夫婦別姓問題は国会へと議論が移る。もともと、たとえ最高裁で違憲判決がでても、ただちに夫婦別姓を認めなくてはならないということにはならず法の改正が必要であることは変わらない。ただ最高裁で違憲判決が出ていれば、選択的夫婦別姓制に反対する者も民法改正に反対することは困難になり、どうしても阻止したければ憲法改正を目指すしかなくなる。その意味では違憲判決がでれば画期的だったことは事実だ。しかし、違憲判決がでなかったからと言って、現状をそのままにしておくことは許されない。世論は選択的夫婦別姓を支持する者が多数を占めており、自民党支持層でも多数を占める。連立を組む公明党は賛成している。そして、何より女性の社会進出の進展に伴い別姓を希望する者が増えている。また夫婦別姓を認めることが更なる女性の社会進出を促すことになる。この現実から目を逸らすことなく、次期国会で選択的夫婦別姓制を確実に実現してもらいたい。


(2021/6/25記)


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