☆ 最後はごみになる ☆

井出薫

 プラスティックごみの増大が大きな社会問題になっている。安価で便利なプラスティック製品が普及するのは当然だが、最後は必ずごみになることに配慮がなされていない。PL法などで、家電製品などはリサイクルのスキームが確立されているが、プラスティック製品にはそれがない。

 スーパーなどで買い物をすると、ほとんどの商品がプラスティック製の容器や包装にくるまれている。近年は、レジ袋削減運動が盛んで、エコバックを持参してレジ袋不要と言う買い物客が増えている。だが、会社や学校からの帰りに買い物をする者はエコバックを持ち歩くことが難しく、どうしてもレジ袋が必要になる。また、レジ袋を減らしても、個々の商品が大量のプラスティックを使っているため、削減効果は限られる。しかも、レジ袋をごみ袋代わりに使っている者が多く、レジ袋がないと、代わりに市販のごみ袋を使うことになるが、市販のごみ袋もプラスティック製なので削減効果はさらに低下する。

 今では、どの市町村でもごみの分別収集が行われているが、効果に疑問がある。市販の弁当に使われる箱はプラスティック製が多いが、中には、プラスティックと紙の両方が使われているものがあり、捨てるときに分解する必要がある。しかし、それに気が付かない者も少なくないだろうし、綺麗に分解できないことが多い。食品の残りかすがべったりこびり付いて、水で流しても取れないことも少なくない。こういうものもプラスティックごみとして出してよいのか、あるいは燃やすごみとするべきなのか迷う。また、分別収集したごみが本当に適切にリサイクルされているのかどうかも怪しい。プラスティックごみは外国に引き取ってもらうことが多いようだが、適切な処理がされているかどうかのモニターがきちんとできているとは思えない。市民の意識を高めるために、ごみの弁別収集は意義があると思うが、今のやり方では、プラスティックごみの削減と適切な処理という観点からは大きな効果は期待できない。場合によっては、ごみの不法投棄などで却って環境汚染の要因になる。燃やして、その熱を温水供給などで有効利用した方がよい場合も少なくない。

 プラスティックごみの削減と適切な処理を進めるためには、製造業者と小売業者に一定の責任を負わせる必要がある。現状では、包装業者や小売店は、買い物客が持ち帰ったプラスティックの行方に何の関心も責任も持っていない。それでは、プラスティックごみ問題は解決できない。もちろん、単価の安い包装・容器類に一々PL法のような法律を適用していたら、包装業者や小売店が倒産するか、最大の生活必需品である食品の価格が暴騰する。それゆえ、包装業者や小売店に新たな責任を課すにあたっては、補助金を含む行政の支援と消費者の協力が欠かせない。低価格で量が膨大な包装・容器類で、行政と市民が積極的に関与する制度や組織を構築することは容易ではない。だが、手を拱いていたら、事態はどんどん悪化する。二酸化炭素と同様、プラスティック自体は無害で直接的な健康被害はない。そのため、事態が深刻化して、誰の目にも被害が明らかになるまで人々の関心は高くならない。だが、深刻化したときには手遅れで、そこから対策を取るのでは、それこそ膨大な資金と労力が必要となる。いまのうちに、行政、生産と流通業界、市民が一体になって有効な組織と法を作り、有効な対策を実行する必要がある。さもないと、人類自体が最大のごみになる日は遠くない。


(2019/9/1記)


[ Back ]



Copyright(c) 2003 IDEA-MOO All Rights Reserved.