井出薫
来年の消費税増税に合わせて、酒類と外食を除いて飲食料品には軽減税率が適用される。しかし、酒類はよいとして外食まで軽減税率の対象外とすることには賛成できない。 外食は贅沢という印象を持つ者がいるが、単身者には、外食より一人分の食事を作る方が高くつく。実際、一人分だけだと、食材だけでも外食よりも高くつくし、料理に使う電気、ガス、水道料を含めると格段に割高になる。軽減税率が低所得者への配慮だとするならば、外食を対象外とすることは理屈に合わない。 外食業はサービス業だからという意見もある。しかし、サービス業は業態が多様でサービス業全体で税率を合わせる必要はない。たとえば、映画と外食が競合することはなく、外食を軽減税率の対象としたところで映画産業に影響が及ぶことはない。 だが、筆者が、外食を対象外とすることに反対する最大の理由は別のところにある。それはごみ問題だ。外食で済ませれば、家庭ごみは出ない。同僚の単身者は、昼食は社員食堂、朝食と夕食はレストランなど外食で済ませている。そのため、自宅ではごみを出すことはほとんどないと言う。一方、自宅で調理をすると、食材の残りかす、食材を包む包装や容器などがごみになる。賞味期限が切れて食材を捨てることも少なくない。特に近年プラスチックごみの増大が深刻な環境問題となっているが、食材を包む材料はほとんどがプラスチックだ(注)。 (注)ここでは、プラスチックは、ビニールやナイロンを含む広義のプラスチックを意味するものとする。 外食を軽減税率の対象外とすることくらいで、直ちに外食が減り、プラスチックごみが急増するとは思わない。だが、外食を軽減税率の対象外とする合理的な根拠がない以上、ごみ問題を考慮して対象とすることが望ましい。贅沢品には高い課税をする必要があるというのであれば、高級レストランやホテルの食事に限定して軽減税率対象外とすればよい。増税までにまだ時間はある。政府には再考を強く望みたい。 了
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