☆ 大雪が降る日 ☆

井出薫

 珍しく東京で大雪が降り、都心でもかなりの積雪量になると予想されている。降雪量の多い日本海側に暮らす人から見れば、これくらいでは大雪とは到底言えない程度だが、雪を想定しない東京、特に都心では影響が大きい。いつもの休日ならば都心に外出しているが、さすがに今日は我慢して家で大人しくしている。小降りになったら雪掻きをしないといけないと思うと気が重い。

 暇なのでネットで遊んでいると、ロンドンの文字が目に入る。ウィキペディアで調べるとロンドンの緯度は北緯51度と記してある。東京が北緯35度だから、ロンドンは遥か北に在り、北海道本島よりもずっと北、樺太あたりの緯度に相当する。緯度だけ見れば、東京よりずっと寒く冬中雪に埋もれているはずだが、実際はそんなことはない。東京の冬よりむしろ暖かいくらいだと聞いている。

 これは、熱塩海洋循環と呼ばれる深層流により起こる現象で、北大西洋に暖かい海流が流れ込むことで、ヨーロッパの気温は日本の同じ緯度の地域よりもずっと高くなる。近代以降、ヨーロッパ諸国が大発展して世界を制覇することになるのも、この恵まれた気候によるところが大きい。

 地球温暖化が進行するとどうなるだろう。熱塩海洋循環が消滅しヨーロッパ諸国は10度くらい気温が下がると予想されている。温暖化は世界が均等に暑くなることを意味せず、極端に温度上昇するところ、低温化するところと影響は不均衡に現れる。ヨーロッパ諸国が地球温暖化対策、二酸化炭素削減に熱心なのも理解できる。10度も温度が下がったらロンドンなどは、抜本的に都市構造の転換が必要になる。

 東京はどうなるのだろうか。暑くなると予想されているが、事はそう単純ではないと思われる。豪雪に襲われることが多くなるかもしれない。気象は複雑で理論的に予測することは困難だ。実験で影響を事前に確認することもできない。だが豪雪が多くなるというリスクも評価しておく必要がある。今日は、外に買い出しに行くこともままならない。低温で水道水が凍る危険性もある。雪の重みで電力線や通信線が切れて停電や通話不能になる恐れもある。移動体の基地局も通信会社の局舎とは有線で接続されているから携帯電話も使えなくなる。買うお金はあるのに食べる物がない、水が来ない、電気が使えない、携帯も固定電話も使えない、などという事態に陥らないように、東京でも今から対策を立てておく必要がある。


(H26/2/8記)


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