☆ 自民党と民主党 ☆

井出薫

 新政権発足1か月、政権運営では自民党が民主党を遥かに上回ることを痛感した。安倍首相は持論の憲法第9条改正を封印し、原発容認であることをはっきりさせながらも、安全確認を強調して再稼働を急がない。デフレ脱却=景気回復実現を中心課題として掲げ、2%のインフレターゲットと継続的な金融緩和、財政出動、成長戦略と矢継ぎ早に施策を公表し、年内に迫る統一地方選、参院選に向けて着々と手を打っている。

 民主党政権が破たんした理由は何か。色々と論じられているが、いまにして思えば、総選挙で大勝した翌年の参院選で敗北したことが最大の理由だった。参院選で勝利を収めていれば、衆参共に過半数を確保し、政策を次々と実現し民主党政権への信認を勝ち取ることもできた。ところが、鳩山は政治資金問題への曖昧な対応と普天間基地移転での安易な約束で自滅、菅は参院選直前に消費税増税を口にして大敗、二人とも政権とは何かが分かっていなかった。政権は維持しなければ意味がない。今の日本で1年やそこらで大きな成果を上げることは難しい。4年掛けて土台を築き、次の4年で仕上げをする。それくらいの展望で政権運営をすることが必要となる。そのためには、まず政権基盤を固め8年は政権の座を守る必要があった。だが、鳩山、菅、二人ともそういう発想がなかった。後継の野田は、財務省の言い分を丸呑みして、社会保障・税制一体改革の全体像を示すこともせずに、消費税増税だけを急ぎ、党内分裂、国民からの激しい反発を招いた。

 ある意味、3人とも誠実な人物だった。遣るべき、言うべきと信じたことを正直に口にした。しかしそれだけでは政権政党の政治家は務まらない。人々が何を望んでいるかを読み取り、人々に希望を与えることが欠かせない。吉田茂、池田勇人、田中角栄、小泉純一郎などは、政策そのものの評価は別として、人々に希望を与えることに成功した。社会現象は自然現象とは異なる。同じ政策を実行しても、人々が希望を抱くか、失望するかで未来は一変する。民主党は希望を与えられず失望だけを与えた。野田の消費税増税は正しい選択だったかもしれない。しかし失望している人々を前に、増税だけを突出すれば失望の度は深まるだけだ。そんなことすら野田は読めなかった。

 地方選、参院選も近い。しかし民主党など野党の反攻の手掛かりは乏しい。自民党より右の維新やみんなと、自民党より左の民主や生活が共闘できる余地は少ない。共産党と社民党は相変わらず唯我独尊で力にならない。参院選後には、自公で両院とも3分の2を占め、自民だけで両院の過半数を占めるという事態が実現する可能性が高い。そうなれば、憲法第9条改正が前面に出てくる。公明党がとことん反対すれば安倍は政権を自民・維新連立に組み替える可能性もある。脱原発も環境問題も大幅に後退する。本当にそれでよいのか、皆よく考える必要がある。また、民主党には失敗を猛省し再生してもらいたい。現状では民主以外に自民の受け皿になりえる党はないのだから。


(H25/1/27記)


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