☆ 人気者だけでよいのか ☆

井出薫

 田中真紀子氏が再選された。一時ほどではないにしても人気は衰えていない。しかし、氏の政治手法は評価できない。

 外相時代の記者会見で、田中氏が同席していた外務官僚を叱りつけているところがテレビに流れたことがある。これをみて喝采した人も居たようだが、筆者は不愉快だった。外務省には色々と問題がある。だからと言って、全国の視聴者の前で人に恥をかかせるような振る舞いは頂けない。

 法に反する行為をした者には厳しい処罰が必要だ。しかし、相手が思うように動かないと、すぐに苛立ち怒鳴りつけ、斬り捨てようとすることは却って逆効果だ。

 どんな組織にも3種類の人間がいる。既得権益に固執して改革に抵抗する者、改革の必要性を理解し実行しようとする者、そして、どちらでもない中間派だ。大抵の場合、中間派が多数を占める。だから、組織を改革するためには、中間派を味方につけて抵抗勢力を排除していくことが必要だ。しかし、相手のプライドを傷つけるような振る舞いをしては中間派の支持は得られない。改革には人を上手に動かす技量が必要だ。

 氏の父、田中角栄は人を動かす天才だった。あるときは大いに褒め、あるときは大いに叱った。だが、プライドを傷つけるようなことは決してしなかった。彼が日本に貢献したかどうかは評価が分かれる。しかし、田中角栄のような才覚がなければ組織を変えることはできない。真紀子氏にはその才覚が欠けており、改革の旗手にはなりえない。

 田中真紀子氏や石原慎太郎氏を筆頭とする政界のアイドルたちは、政治を身近なものにした。そのことは素直に評価しなければならない。だが、そういう人物ばかりをちやほやしていると、結局国民にツケが回ってくる。このことを肝に銘じておきたい。

(H15/12/4記)


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