☆ 左翼はどこに行く ☆

井出薫

 共産、社民の左翼勢力が総選挙で大敗を喫した。保守二大政党化が進む中、左翼は歴史的役割を終え、日本の政界から消えていくのだろうか。

 共産党はいまだに一枚岩の党だ。個々の議員や党員が、公の場で、党中央の決定を批判したり、異議を唱えたりすることは許されない。ソ連・東欧の共産政権が倒れたとき、共産党は「悪い社会主義が倒れ、善い社会主義の時代が来た。」と負け惜しみ(?)を言ったものだ。だが、旧態依然の中央集権的な党組織を改革することなく、自分たちは崩壊した共産党政権とは違うと幾ら主張しても説得力はない。国民の支持を得られないのは当然だ。

 社民党は、拉致問題と秘書給与疑惑が響いた。拉致事件の責任が社民党にあるかのごとく語るのは全くの言い掛かりだが、朝鮮労働党と長年の友党関係にありながら問題解決に何の寄与もできなかった責任は重い。秘書給与疑惑への対応の拙さも含め、政党としての力量が問われても致し方ない。

 いまどき左翼だ右翼だなどと言うこと自体が時代錯誤だと笑われるかもしれない。東西対立が終焉して、民族並びに宗教対立が国際政治を動かしている現在、マルクス主義を核とした左翼思想はもはや時代遅れで、共産党や社民党の衰退は歴史的必然なのだという意見もあろう。欧州でも、一時期脚光を浴びたイタリア共産党を中心としたユーロコミュニズムは、いまや見る影も無い。

 だが、世界を見渡せば、グローバル化の名の下、貧富の差は縮まるどころか拡大している。戦争という悲劇も一向に収まる気配はない。日本国内でも「勝ち組・負け組」という思い遣りに欠ける表現が幅を利かせて、貧富の差が広がりつつある。左翼の役割は終わっていない。まだまだ、社民党や共産党が活躍する場はある。ただし、旧態依然の体質を改善することができなければ明日はない。

(H15/11/12記)


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