☆ プロ野球はそんなに魅力がないか ☆

井出薫

 横浜ベイスターズの売却先が決まったらしい。しかし、どうして、こんなに時間が掛かったのか、何故IT系のベンチャー企業なのか。別にIT系のベンチャー企業がいけないと言うのではない。もっと資金的に余裕がある大企業の中から手を挙げる者がいないのが不思議なのだ。

 4年連続最下位で観客動員数も低迷している。経営が苦しいことは容易に想像できる。しかし、かつて「大洋ホエールズ」として勇名を轟かせ、数多の名選手を輩出し、巨人、阪神とともに球界を大いに盛り上げた時代があり、今でもたくさんの根強いファンを有する横浜ベイスターズは魅力的な存在ではないのだろうか。たとえば、日本一の利益を誇るNTTグループ、本業でソフトバンクと凌ぎを削るKDDI、収益と利益でヤクルトを大きく上回る(業種が近い)味の素や花王、一時の勢いはないにしても今でも世界のブランドであるソニー、買収する企業が幾らあってもおかしくないではないか。

 横浜に拘わらず多くの球団が毎年20から30億円の赤字を出していると言われる。儲けているのは巨人と阪神くらいで、かつては利益を挙げていた中日も赤字になり、それが落合解任に繋がったとも言われている。今は株主の目が厳しく、非正規社員の増加や賃金据え置き又は引き下げで従業員の目も厳しい。しかし、それでも上に挙げた規模の企業ならば、20、30億円の赤字は宣伝費として考えれば十分に元手が取れる。ITや家電関係ならば工夫すれば本業とのコラボレーションが可能で、球団の赤字は本業の収益増で十分補うことができるし、球団経営の黒字化だって可能だ。優勝すれば大いにPRになり社員の士気も上がる。球団買収は従業員や株主の理解を得られるはずなのだ。

 某新聞社の会長が牛耳るプロ野球機構と関わりになるのは御免だという面もあろう。だが、横浜ベイスターズの買収に超大手企業が手を挙げない最大の理由は、プロ野球に魅力がない、未来がないと多くの経営者が考えているからに違いない。しかしそれは間違っている。プロ野球を放映しても視聴率が10%に満たないと言うが、人気俳優を配したにも拘らず視聴率が10%に満たないドラマが今では普通にある。人気の韓流ドラマでも視聴率は大抵10%未満だ。関東地方の巨人人気は確かに落ちているかもしれないが、それでもプロ野球は今でも大いに人気がある。男の子たちが将来なりたい職業のトップには野球選手という文字が並ぶ。関東地方の巨人戦の視聴率だけをみて、プロ野球に魅了がないと考えるのは大いなる勘違いだ。

 プロ野球に魅力がないと簡単に思いこむ洞察力の欠如と短絡的な思考、ここに日本企業の低迷の一因があるように思えてならない。IT分野で、米国、欧州、韓国、中国の企業に圧倒され、話題のスマートフォンでも通信事業者以外では、報じられるのはアップル、グーグル、サムスン、ノキアなど外国企業の名ばかりで日本企業の名前はどこにも登場しない。何故なのか。保守的になり、大手電気通信事業者の言いなりになっても、利益が上がっているならそれで良しとする風潮が蔓延しているからに違いない。こんな調子だから、経営者はプロ野球に手を出し赤字で批判されたら大変だという守りの姿勢に入る。

 IT時代、プロ野球は企業にとって魅力的な存在のはずだ。そのことに気が付き、プロ野球球団の売却話が出たら、買収の申し込みが殺到するようになってほしい。そのとき日本経済は活力を取り戻すことになる。


(H23/10/23記)


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