☆ 抜本的な対策を ☆

井出薫

 寒さが本格化し、インフルエンザやノロウィルスが流行してきた。毎年同じことの繰り返しだ。二つの病とも命に関わるほど重病化することは少ない。たまには感染症で体内の免疫を刺激することも必要だという大胆な意見もある。しかし幼児や高齢者、病人は死亡することもあるし、重い後遺症が残ることもある。インフルエンザで高い熱が出ると最低でも3,4日仕事を休むことになり、筆者のような無駄飯食いならいざ知らず、社会活動に与える影響も小さくない。だから、撲滅できるものなら撲滅するに越したことはない。

 流行してやがて峠を超える。夏場にインフルエンザを発病する者はごく少ない。一体、流行が終焉したあと、インフルエンザウィルスはどこに隠れているのだろう。人体に発症しないまま隠れている、他の動物の体内に隠れている、土壌に潜んでいる、流行が北半球と南半球で交互に起きている。素人考えでも色々と想像できるくらいだから、可能な潜伏場所は極めて広いと推測される。しかし完全にウィルスが死滅すれば、無から有は生じないの例え通り、インフルエンザが起きることはない。だからどこかで大繁殖しないで密かに生きていることは確実だ。そこを叩けば流行を未然に防ぐことができる。なぜそれができないのだろうか。

 世界の人々が自由に行き来する現代、特定の国だけ対策をとっても効果は十分ではない。日本でウィルスの潜伏場所を発見し撲滅することに成功しても、海外からの遣ってくる人々が日本にウィルスを持ち込んでしまう。逆に外国でウィルスを撲滅しても日本人がその国にウィルスを持ち込んでしまう。だから抜本的な対策には国際協力が欠かせない。しかし、それが撲滅を困難にしている原因になっている。WHOなどを通じて世界各国に協議を呼びかけなくてはならず、そのために要する時間とコストは馬鹿にならない。発展途上国ではインフルエンザなどよりもずっと深刻な感染症を多数抱えているから、幾ら日本が、協力してインフルエンザウィルスを撲滅しようと呼びかけても乗ってくる国は余り出てきそうにもない。

 そうなると、取りあえず治療薬とワクチンの開発が先行することになる。しかしインフルエンザワクチンの効果には疑問がある。毎年ワクチンを接種しているのに毎年感染している者がいる。感染しても重病化しないと言われるが、その者は毎年40度を超す熱を出しており重病化していないとは言えない。要はインフルエンザワクチンの効果は個人差があるとは言え実際のところは小さいというのが現実だ。一方、抗ウィルス薬は耐性菌と副作用の問題が付き纏う。48時間以内に服用しないと効き目がないという課題もある。

 にわかに国際協力が望めない以上、今年も国内対策を充実させ患者数を極力小さく抑える必要がある。それもワクチンや抗ウィルス薬を頼ることなくできる対策を考えたい。先ずは、感染経路の迅速な把握による感染拡大の防止だ。おそらくこれまでは十分な対策が取られてこなかったと推測する。その証拠に毎年インフルエンザに苦しむ知人は、どこから感染したのか本人も医療機関も全く調査していない。これでは感染経路は特定できない。確かにプライバシーの問題があり難しいのは分かるが、皆が協力して感染経路を早期発見し拡大を防止することができるはずだ。その際インターネットも活用する。例えば医療機関がインフルエンザ発生と感染源に関する情報をインターネットで迅速に公開することが(混乱を招かないよう配慮が必要だが)大いに役立つはずだ。いずれにしろ、ただ薬に頼っているだけでは毎年同じことの繰り返しになる。高齢化社会の到来を控え、強毒性のパンデミックが危惧される現在、新しい発想で対策を考えるべきときだ。


(H23/1/11記)


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