井出薫
森田千葉県知事が成田カジノ構想を発表した。他にもカジノに興味を持つ知事がいると言う。そう言えば、何年か前、石原東京都知事も盛んにカジノ構想にご執心だったが、「国の頭が固すぎてどうにもならない」と諦めたことを思い出した。 端からカジノに反対するつもりはないが、思惑通り経済活性化、地域経済振興に貢献するのか疑問がある。報道を聞くと、経済的メリットは自明であり、治安や教育への配慮だけが課題であるかのように思えてくるが、海外の例を引き合いに出して経済活性化に繋がると即断するのは安直すぎる。経済的なメリットが本当にあるのかしっかりした検証が必要だ。少なくとも私は行かない。 成人向けにはパチンコ、10代の若者向けにはゲームセンターという人気の娯楽施設が至るところにある日本で、今更カジノを作っても大入りになるとは思えない。最初は国内外の観光客で賑わうだろうが、すぐに飽きられてしまうのではないか。カジノ目当てに来日する外国人旅行客が多数いるとは思えないし、国内でカジノのリピータになる者も多いとは思えない。以前から遊園地があったのにディズニーランドは大当たりしたと反論する者もいるだろうが、ディズニーランドオープン当時と今では日本の勢いが違う。まだ高度成長の余韻があり欧米経済が奮わない中で日本企業だけが順調に国際市場で勢力を拡大していた時代と、長期低迷期に入っている今の日本では状況が全く異なり、ディズニーランドの再来を期待しても無理だと予想する。 パチンコやゲームセンターの各種ゲームは技能を要し、上手くなれば見返りが増える。そこが日本人の気質にあっており多くの者が夢中になる理由に違いない。ところがカジノは度胸が不可欠だが技能はほとんど要らない。だから日本人が熱中するとは思えない。 治安や教育上の悪影響は運営方法を工夫することで回避可能だろう。だが知事たちの思惑である経済活性化に繋がらず、寧ろ数年後には財政の重荷になる気がしてならない。そもそもカジノなどという古臭い娯楽施設くらいしか低迷からの脱出法を思いつかないのが情けない。世界に先駆ける斬新なアイデアを提唱し実現するくらいの力量ある人物あるいは集団が登場することを望みたい。 了
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