☆ 国民も賢くなろう ☆

井出薫

 野党に転落してすっかり影の薄くなった自民党総裁選だが、ともあれ3名が立候補して論戦を繰り広げている。非常事態だけに誰が当選するか予断を許さないが谷垣が最有力と報じられている。

 谷垣は、小泉退陣後、安部、福田、麻生と並び首相候補の一人と目されていた。事実、総裁選にも出馬した。だが人気に乏しく他の候補に大きく水をあけられ、福田、麻生就任時の総裁選には立候補すらできなかった。小泉退陣時、筆者は、4名の中では、バランス感覚、状況判断力とも最も優れており、谷垣こそ後継に相応しいと思っていた。安部は拉致被害者問題での毅然たる態度、福田は長年の官房長官としての実績、麻生はアニメファンを核とした秋葉人気とざっくばらんな人柄、いずれも人気はあったものの、状況判断力とバランス感覚に疑問があり、首相に相応しい人材ではないと感じていた。だが目先の人気で国民は他の3名に高い支持を与え、谷垣に目を向ける者は少なかった。

 自民党が3代に亘り、器でない者を首相に据えたお陰で、政権交代が実現したのだから結果的には良かったではないかという意見もある。たとえ谷垣が首相になったとしても、自民党長期政権の疲弊は覆う術もなく、退陣に追い込まれることに変わりはなかったとも考えられる。しかし、小泉退陣後、ほぼ3年に亘り、資質に欠ける者が首相を務めたことの弊害は大きかった。改革路線は後退し族議員など既得権益を有する者が息を吹き返し、その一方で改革路線の弊害で格差が拡大し、年金問題や拉致問題などでは何の進展もなかった。日本のような国では誰が首相になっても同じだという意見をしばしば耳にする。しかし、それは全てが順調にいっているときの話しで、難題山積の時代にはトップの交代で状況は一変する。

 国民はもっと賢くならないといけない。勇ましい掛け声に釣られたり、アニメ好きで親近感がわく、美男美女だ、などという政治家としての資質に関係ないことで政治家を選択したりするような愚を繰り返さないことが大切だ。選択に必要な情報は確かに十分ではない。それでもインターネットの普及などで以前より遥かに多くの情報を得ることができる。筆者を含め、最後の決定権を握るのは国民であることを自覚し、よりよい判断ができる市民として自律できるよう努めていきたい。



(H21/9/23記)


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