☆ 日本外交の迷走 ☆


 他国の上空に了解もなしにロケット(ミサイル?)を飛ばす、人工衛星を打ち上げるのにITUに電波申請もしない、北朝鮮の一連の行動は明らかに国際ルール違反だ。しかし、ひたすら新たな制裁決議を求める日本政府の対応も滑稽だった。最初から中国とロシアの反対で新たな制裁決議などできないことが分かっていながら決議に拘った。これは選挙対策としか思えない。いや選挙対策ならばまだ良い、本気で現在の外交戦略が問題解決の最善策だと信じているとしたら空恐ろしい。

 北朝鮮のルール違反を見逃すことはできない。しかしひたすら制裁により拉致や核の問題を解決しようとしても、効果がないことはすでにはっきりしている。オバマ米国大統領は対話を示唆しているが、日本の政治家も見習って対話を通じた現実的な解決策を模索してもらいたい。報道や国民も冷静に事態の推移を見守る必要がある。

 7年前、長年否定してきた拉致を北朝鮮は初めて認め謝罪した。なぜ拉致を認めたのか。そこには経済崩壊という現実を前にして、軍事路線から国民経済優先への転換を主張する北朝鮮国内穏健派の台頭が推測される。だが日本は北朝鮮が期待したものを一切与えず、ひたすら強硬路線へと舵を切り、国内は経済制裁一色となる。これで北朝鮮国内の穏健派の思惑は完全に外れ、強硬派に主導権を奪い返されたのではなかろうか。それ以来、北朝鮮は核兵器開発を進め、核による脅しで諸外国に圧力を掛ける瀬戸際外交へと逆戻りした。ある意味、日本の強硬派と北朝鮮の強硬派は互いに助け合っている。

 北朝鮮の一連の行動は非常識で世界平和を脅かしている。拉致は如何なる観点からも決して容認できない。北朝鮮が世界で最も人権が疎かにされている国の一つであることも間違いない。それでも、現状では、金正日政権と粘り強く交渉する以外に道はない。そのためには強硬路線、制裁強化だけでは先は見えてこない。決して譲歩しろと言っているのではない。毅然とした態度で臨むべきところは臨み、主張すべきことは主張し、なおかつ対話を継続することが拉致と核を解決するただ一つの道だと言いたいのだ。

 別に日本人に限ったことではないと思われるが、しばしば外国人から日本人は本音と建前に大きな開きがありそれを巧妙に使い分けると指摘される。ところが、こと外交となると、ただひたすら建前あるいは本音だけになり、柔軟で強かな行動ができなくなる。だがそれでは外交問題は解決できない。北朝鮮の動向だけではなく、広く世界情勢を分析し外交戦略を練り直す必要がある。今のままでは、日本は世界から孤立することになる。


(H21/4/11記)


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