せっかく盛り上がっているのに水を差したくはないが、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は本当の意味で野球の世界大会ではない。参加資格も曖昧で前回米国代表のA.ロドリゲスが今回はドミニカ代表で出場している。各国の力の入れ具合もいま一つで実力世界一を競う大会とは言い難い。たとえば世界大会と銘打つのであれば、アジア予選を前回に続き東京ドームで開催するのはおかしい。今回は原則日本以外、日本で開催するにしても東京ドーム以外で開催するべきだ。中日の選手が一人も参加しないのは読売カップ的な色彩がある大会への反発が背景にあるのではないかと勘繰りたくなる。 野球人口は世界的にみると少ない。野球がトップクラスの人気スポーツであるのはアメリカ、日本、キューバなどごく一部の国でしかない。台湾のプロ野球は崩壊寸前、五輪優勝の韓国も選手の年棒を見ると大リーグは言うまでもなく日本と比較してもべらぼうに安く人気が低迷していることが容易に伺える。ヨーロッパやアフリカには野球はほとんど普及していない。このように世界的に見てマイナーなスポーツであるという現実が五輪種目から外された最大の原因となっている。日本では野球の五輪種目への復活を期待する声が大きいが、果たして現在のWBCが野球の裾野を広げ五輪種目への復活に繋がるだろうか。 期待薄だと言わなくてはならない。 野球の国際組織には国際野球連盟があるが、この組織にはメジャーリーグが参加していない。そしてWBCは国際野球連盟が開催する大会ではなくメジャーリーグが主催する大会でしかない。つまりWBCはメジャーリーグという一国内の組織の営業戦略で開催されている大会で、元々世界大会、世界一を決定する大会という体をなしていない。これでは野球の国際化、世界への普及は期待できない。 そんなことはどうでもよい、野球ファンとして楽しめればよいのだと意見もあろう。しかし現行のWBCでは果たしてこの先も大会が続くかどうか疑わしい。有力選手の出場辞退が続き、主催国である米国が毎回予選落ちなどという事態になれば米国内での盛り上がりが期待できなくなりあっさりと消滅してしまうこともありえる。極端な言い方をすれば、日本の野球ファンがWBCを楽しむためには日本が二度続けて優勝などしては駄目なのだ。それほどWBCの土台は脆弱だと言わなくてはならない。 国際野球連盟にメジャーリーグが参加し、国際野球連盟主催のプロ参加の世界大会が開催されることが強く望まれる。それが実現されて初めて、野球の国際化が進み世界の競技人口が増え、五輪種目への復活の道が開かれる。野球のより一層の発展を願う者としてメジャーリーグの国際野球連盟への加盟とWBCを超えた大会の出現を待ちたい。 了
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