☆ 自由貿易は素晴らしいか ☆


 世界的な不況に伴う保護主義的な動きに対して各国は保護主義に反対し自由貿易を守ると宣言している。だがそれほど自由貿易は素晴らしいことなのか。

 自国で得ることができない、あるいは足らない物を貿易で得ることができる。逆に自国で余っている物を外国に輸出することもできる。自国で生産すると多大な費用が掛かる製品を外国から安く仕入れることができ、逆に自国で安く作ることができる物を外国に輸出することもできる。資源に乏しい日本は輸出で経済発展を遂げた。そして、いま、輸出を梃に急成長を遂げている国がたくさんある。また貿易を通じて人々の交流が活発になり平和と相互理解が促進される。一般論として貿易が人々の生活を豊かにすることは間違いない。しかし自由貿易は本当に万能なのだろうか、保護主義的な政策は常に悪なのだろうか。

 日本は自動車や家電、電子材料などの輸出で経済大国と呼ばれるようになった。しかしその一方で国内の農業、水産業、林業など一次産業は壊滅的な打撃を受け、食糧自給率は50%を割り、木材のほとんどを輸入に頼らなくてはならなくなった。海外の景気が悪化すると輸出が減り国内の景気も悪くなる。一次産業の低迷は、都市と地方の格差を拡大し、日本の国土と自然は荒廃した。

 日本のように輸出産業が経済の柱となっている国にとって自由貿易は生命線だ。だが雇用の安定、食糧の安定供給、調和のとれた国土の利活用、自然保護などの観点から、一定の範囲で貿易が制限されるのはやむを得ない。いや寧ろ一定の制限を設けて貿易を行うべきだ。

 そのためには新しい世界経済秩序の構築が不可欠で容易ではないことは分かっている。国内の輸出産業への影響も大きい。しかし長期的に考えると自由貿易で世界の人々の平和と繁栄を維持することはできない。世界経済の悪化を機に貿易の在るべき姿を抜本的に見直すべきときがきている。


(H21/3/3記)


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