☆ リスクは報酬を正当化するか ☆

井出薫

 真面目に働いて得た収入よりも株式譲渡益の方が税率は低い。馬鹿げた話しではないか。株式の譲渡益課税率を上げたら株式市場が縮小して景気に悪影響を与えると言う。本当かどうかちょっと疑わしい。共産党が主張するように他の所得と合わせて課税するか税率を上げるべきではないだろうか。

 そもそも株式の譲渡益を正当化するものは何だろう。株を取得した企業の事業に少しも貢献をしていないのに配当と譲渡益を得ることができる。これは何の対価なのか。お金を使わずに我慢する、つまり待つことが報酬を正当化するという議論がある。預金の利子についてはよく聞く議論だ。しかし利率が決まっている預貯金より株式取引は遥かに膨大な利益を生み出す。この報酬はどこから生まれるのか。リスクを負うことから生まれるという議論がある。しかし承服しがたい。社会に貢献するために新たな事業に挑戦する者、それに出資する者は確かにリスクを負って社会貢献する。それが報酬を正当化すると言っても異論はない。しかし株式市場で儲かりそうな株を購入し、値上がりした時に売却し大儲けして、そこにどんな社会貢献があると言えるのだろう。何もありはしない。株式の譲渡益は不毛な社会的浪費に過ぎない。

 リスクを負うことが巨額の報酬を正当化するのは、それが大きな社会貢献に繋がるときだけだ。株式取引にはそれが欠けている。やはり今の税制はおかしい。短期的な経済効果よりも公平という観点から税制の見直しをお願いしたい。



(H21/1/27記)


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