☆ 自己責任? ☆

井出薫


 自己責任という言葉をよく耳にする。ペイオフの全面解禁は2005年4月まで延期されたが、原則的に資産の運用や年金の積み立てなどは各人の自己責任でおこなえということだ。

 自己責任を国民に求める代わりに、情報公開を徹底させると政府は言う。だが、企業の財務諸表や企業の経営状態を示す指標を十分に理解できる人がどれだけいるだろう。理解できたとしても企業の外部発表資料だけで経営状況を判断することは難しい。どうしてもエコノミストや新聞雑誌の記事に頼ることになる。だが、彼(女)らは信頼できるのだろうか。かなり怪しい。エコノミストやジャーナリストは自分の予測や解説が外れても責任を取らされることはない。だから思い込みから偏った情報を流しがちになる。

 たとえ、十分に信頼のおける情報源があったとしても、現代のように情報が氾濫している時代に、一般市民がそれを迅速かつ確実にキャッチすることは困難だ。サラリーマンが就業中に、パソコンにかじりついて株価情報やらニュースを1日中眺めていたら、会社から大目玉を食らうだろう。そんなことがないように、社内ネットワークから株式情報などを閲覧できないようにシステムで規制している会社も少なくない。

 要するに一般市民は賭けをしているようなものだ。誰がそんなことを望んでいるのか、誰のためになるのか。

 情報公開するから自己責任を持てというのは結局ところ行政の責任放棄の言い訳だ。行政改革の大義名分のもと、行政は責任逃れをしようとしている。

 一般市民にも、役人や政治家憎さで行政改革(に繋がるように見える政策)をよく考えずに支持しているという面がある。スリムな行政組織より正直者がばかを見ない社会を作ることが大切であることを忘れないようにしたい。

(H15/8/27記)


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