☆ 経済効果とは何か? ☆

井出薫


 いよいよ阪神優勝の日が迫ってきた。阪神ファンの歓喜のときは近い。ところで、「阪神優勝の経済効果は数千億円だ」などという記事をときどき目にするが、経済効果数千億円とはどういうことなのか、どうもはっきりしない。たんなる阪神ファンの喜びの表現だけのような気もするが、ちゃんと根拠はあると言う。本当だろうか。

 阪神優勝で、関連グッズが売れる、デパートや商店街、交通機関の売上が大幅に伸びる、優勝ツアーなど各種イベントが開催され収益が期待されるなど、局所的に利益を得る人がいることはすぐわかる。だが、それが本当に経済全体にプラス効果を生むのかどうか、いまひとつ合点がゆかぬ。阪神の優勝記念セールで大量の買い物をした人は他の消費を手控えるのではないか。阪神が優勝しなければ旅行していた人が、旅行費用を節約して阪神グッズを買うとしたら、正味の経済効果はゼロだろう。こういうことは生じ得ないのか。阪神優勝に浮かれた社員が仕事をしなくなる、などということがあると経済効果はマイナスだろう。ワールドカップの後、韓国の活躍が却って仇となり、一時期韓国の経済活動が停滞したなどということもあったように記憶する。

 阪神優勝に限らず、オリンピックなど大イベントがあると必ず経済効果云々と宣伝され、一時的に売上を伸ばし儲かる企業や利益を得る政治家がでてくるが、大抵の場合、祭りのあとのなんとやらで、反動の方が大きかったのではないか。

 阪神優勝の経済効果云々は所詮阪神ファンのエコノミストのご祝儀に過ぎないのかもしれない。実際、昨年は巨人優勝の経済効果が話題になった。一昨年は筆者が応援するヤクルトが優勝したが誰も経済効果云々した者はいなかった。所詮はお遊びなのか。なら、それでもよいが、いかにも根拠があるかのように騒がないでもらいたい。
(H15/8/26記)


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