☆ 民主党へ望む ☆

井出薫

 麻生政権にとって景気悪化は却って追い風になりそうだ。発足早々麻生政権の支持率は低いが、これから上昇に転じる可能性がある。矢継ぎ早の景気対策、経済に強い?麻生をアピールする機会の増加などで、首相への期待が高まることが予想されるからだ。

 思えば、小泉元首相が高い支持率を得た背景には前任の森元首相が余りにも無為無策、国民感情に鈍感だったということがあった。その点で麻生首相も似た環境にあると言ってよい。何を聞かれても自分の意見をはっきりと述べず、官僚と野党のご機嫌取りに終始した挙句最後は政権を放り出した福田前首相の後任として、はっきりと自分の考えを述べ、民主党に喧嘩を売る麻生首相が国民的人気を得る素地は十分にある。

 このような状況下、民主党の戦略がはっきりしない。このところ、マルチ商法関係者からの便宜供与、小沢代表の健康不安など悪い材料ばかりが聞こえてくる。しかも福田前首相就任当初はあれほど徹底抗戦した給油法案に賛成こそしないものの早期成立を容認したことなど余りにもご都合主義で、選挙民から政権担当能力に疑問を持たれても不思議ではない。相変わらず早期解散を求めているが勝利の見込みがあるのだろうか。昨年の参院選大勝の余韻に酔っていては現況を見誤る。選挙の日程を決めるのは麻生首相であり、民主党など野党は選挙戦略を描くのが難しいのは事実だが、手を拱いたままでは政権獲得は覚束ない。

 景気が悪化して、選挙民の間でも、選挙よりも景気対策、政権交代は政局混迷に繋がり不安だという空気が広がりつつある。民主党始め野党各党は、抜き打ちの早期解散への準備を進める一方で、早急な解散は求めないと方針転換した方がよい。景気、年金など国民にとって切実な課題に対して明確な政策を提示し国民の理解を求め、その一方で与党の政策と既得権益に縛られ金属疲労を起こしている政界、官界の体制を理路整然と批判するという戦略が有効だ。そうしてこそ政権担当能力を持つ政党として国民の信頼を得ることができる。だが、そのためには相当の期間が必要であり早期解散は得策ではない。そもそも国民にとって現状ではこれ以上政界が混乱することは利益にならない。

 あと二つ注文がある。民主党幹部は小沢代表に頼り切りだが、この姿勢を転換する必要がある。首相に相応しいのは麻生か小沢かと国民に尋ねると麻生に遥かに多くの票が集まる。これは与党の強みという面もあるが、小沢代表を国民が支持していないことの現れでもある。国連決議があれば自衛隊の海外での武力行使が可能とする首を傾げざるを得ない強引な憲法解釈、気紛れで排他的な姿勢など、多くの者が小沢代表の政治姿勢とその思想に懸念を抱いている。さらに郵政民営化反対だけで存在している国民新党と統合を模索しているが、果たしてこれが国民のためになるのか。特定郵便局長など既得権益に胡坐をかいた一部の者たちだけの利益を図ることになるのではないか。多くの者が抱くこの疑問に対して明確な回答が必要だ。

 民主党政権が実現したとして自民党政権より良い社会ができるかどうかは分からない。しかし既得権益に雁字搦めで二世議員だらけの自民党長期政権の弊害は大きい。長期的に考えれば、政権交代がない国では、既得権益を持つ者や金儲けに長けた者だけが栄え、真面目に働いているのにコネ、学歴、資産などがないために報われない者が増大することは避けがたい。ナチなど独裁的・反動的な政党は論外だが、どの政党が最善かということよりも、政権交代の可能性があり、国民に実質的な選択肢があるということが大切なのだ。国民に選択肢があるとき初めて民主制は有効に機能し、試行錯誤を繰り返しながら国民は社会の主人公として自らの役割を自覚し、政党もそれに応えて成長する。今回は政権交代の絶好の機会だ。だからこそ民主党の使命は大きい。心して掛かってもらいたい。



(H20/10/27記)


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