☆ ファンの納得する監督を ☆

井出薫

 WBCの日本代表監督選びが迷走している。気になるのはファンの納得する人選という視点が欠けていることだ。

 一旦は星野で決まりかけたようだが本人が固辞して白紙に戻った。北京五輪の敗北を全て星野の責任にするのは酷だろう。短期決戦で力が接近しているチーム同士の試合では7割以上が運で勝敗が決まる。とは言え、怪我で満足なプレイができない選手をメンバに選んだこと、金メダル以外はいらないとまで公言したことを考えると、結果責任を問われるのは当然で、星野が五輪監督に続いてWBCの監督を務めるのではファンは納得しない。筆者の周囲でも、星野を高く評価するファンも今回は辞退するべきだと言っている。

 では誰がよいか。強豪国が揃い短期決戦のWBCでは誰が監督でも優勝できる確率は10%にも満たない。第1回大会でも米国が二次予選敗退という大番狂わせがあったから日本が準決勝に進み優勝できただけで、そうでなければ日本は二次予選で終わっていた。余程の運がなければ優勝はできない。そのことを考えると、やはり日本のプロ野球界の象徴的存在である長嶋か王が遣るのが一番相応しくファンも納得するだろう。だが如何せん二人とも監督ができる状況ではない。

 そうなると、なかなか難しい。短期決戦に実績がある野村、森、落合を挙げる声がある。だが、3人とも華やかさに欠け日本代表監督には似つかわしくない。寧ろ野球新興国で代表監督となりWBCで物の見事に日本代表を倒すというシナリオが彼らには似合う。日本シリーズの勝利チームの監督ではどうか。だが落合以外の顔ぶれだと疑問が残る。渡辺は監督1年目で経験不足が不安材料となる。原も大逆転優勝で巨人贔屓のメディアでは名監督扱いだが、巨人ファンの多くが原を名監督と思っていない。

 この際、日本人に拘る必要はない。人気が高く本人も遣る気を見せているバレンタイン、広島を強くしたブラウンでも悪くない。いや、広く海外に目を向けてもよいのではないか。思い出すのは昭和53年のヤクルト初優勝、翌54年の近鉄初優勝だ。長年お荷物球団と呼ばれた2チームの初優勝の立役者は誰だったか。そう、赤鬼の異名を取り両チームのファンから絶大の声援を受けたチャーリー・マニエルその人だ。そのマニエルは今、海の向こうでフィリーズの監督としてワールドシリーズチャンピョンの座を岩村が所属するレイズと争っている。この際、ワールドシリーズ終了後に、マニエルに日本代表監督を打診したらどうだろう。米国の手のうちは分かっているし、日本の野球にも詳しい。

 勿論マニエルは無理だろう。だが何より大切なことは、密室で監督選びをするのではなく、ファンを楽しませファンが納得する監督人選をすることだ。



(H20/10/24記)


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