井出薫
中山国土交通相が放言を繰り返して非難を浴びている。辞任の意向とのことだが当然だ。初めから大臣などという要職に就くべき人物ではなかった。 国交相が日教組批判をする理由が分からない。氏は文教族で日頃思っていることを口にしているのだろうが、役割が違う。国交相に任命されたのだ。それくらいのことも分からないのか。日教組批判もお粗末極まる内容だ。日教組の思想や行動に批判するべき点はあるだろう。だが日本の教育が荒廃しているとすれば、それは日教組だけの責任ではなく自民党文教族と文科省にも責任がある。寧ろ権力を握っている後者の責任の方が断然大きい。日教組も自民党文教族・文科省も共にどうすれば良い教育ができるかという一番大切なことをそっちのけでイデオロギー闘争に明け暮れた。教育現場の混乱の原因はそこにある。それを無視して日教組を潰せなどと言うのは勘違いも甚だしい。日教組は道徳教育を批判するから駄目だと言うが、道徳教育は難しい。思想信条、宗教、人生経験、置かれている環境の違いなどにより、何が人として大切か意見が違ってくる。「殺すな」、「盗むな」、「嘘を吐くな」、これくらいならばほとんど人の意見が一致する。しかし、「知能が高く感情も豊かな鯨や海豚を食用にすることは許されるのか」、「安楽死は是か非か」などという問題になればもう意見の一致は困難になる。知識だけではなく道徳を教えることが大切であることくらい誰でも知っている。しかし大上段に構えた「道徳教育」なるものを国家が教育現場に強制することには多くの問題がある。況や中山氏のような人物が教育に大きな影響を与える自民党文教族なのだから尚更だ。 それにしても、太田氏にしろ、中山氏にしろ、政治家の話しを聞いていると、知的にも情操的にも余りにもお粗末な人物が多すぎる。こういう人たちが国会を動かしているかと思うと空恐ろしくなる。中山氏は経歴を見ると東大法学部卒で財務官僚出身だ。若い頃はさぞかし頭が良かったに違いない。ところがそういう秀才でも政治家になるとおかしくなるらしい。たぶん政治家は口だけあれば良く、頭や心を使う必要はないのだろう。だが、それではいつかは破綻する。対策が急がれる。取りあえず次の選挙で投票しないことだ。 了
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