☆ 雷雨とICT ☆

井出薫

 ICT機器は益々小型化・高性能化が進んでいるが弱点がある。強い電磁場に弱いということだ。今年は例年になく雷が多くパソコンやネットワーク機器だけではなくマイクロプロセッサ内蔵の家電製品なども軒並み故障している。停電も多い。これからもICTが発展、普及していくことは確実で、家電などもネットワークで繋がることが当たり前の時代が来ると予想されるが備えは十分だろうか。

 LSIチップなど小型部品は過大な電圧が掛かると簡単に壊れてしまう。そうなるとLSIに内蔵されたプログラムに頼る機器はすぐに動かなくなる。雷対策がないわけではない。誘導電磁場で生じる過大電流を阻止する機器があり、量販店や専門店にいけば容易に手に入れることができる。ただし、それは万能ではなく、誘導電磁場の大きさや設置環境によっては効果がないことがある。

 昔のアナログ電話は電話局から銅線で電源供給されており停電しても電話は繋がった。しかし、ひかり電話などFTTHは停電になると自宅に設置された回線終端装置が作動しなくなり電話が通じなくなる。UPS(無停電電源装置)を設置すれば暫くは通じるが、停電が長期化すれば、いずれ使えなくなる。携帯電話があるから大丈夫と呑気に構えている者もいるが、携帯の基地局も雷雨の影響で停電したり基地局設備が故障したりして通信が不可能になることがある。寧ろ固定通信のネットワークよりも携帯電話のネットワークの方が信頼性は低い。携帯で十分だと言って、固定電話を解約する者が増えてきているが、携帯電話の信頼性の低さを理解した上で解約しているのか気掛かりだ。

 今年のように雷が多い年は珍しい。だから、そんなに心配しなくてもよいかもしれない。だが、忘れてはならないことは精密機器ほど脆弱だということだ。ICTが使えなくなったときにも困らないように日頃から準備をしておくことが望ましい。ちなみに人間も精密機器のはずだが意外と逞しい(図々しいと言うべきか)。ICTにこういう逞しさ・図々しさを身につけさせることがこれからの重要な研究課題となろう。



(H20/8/31記)


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