☆ 選手生産性 ☆

井出薫

 先日プロ野球選手会の調べで各球団の年棒が発表されたが、巨人がトップで一人当たり5,510万円、ソフトバンク、阪神、中日と続きこの4チームまでが5千万円を超え、その他のチームはぐっと年棒が下がり、一番低い広島では一人平均2千万円を割っている。この数字には外国人選手の年棒が含まれていないから各球団の総年棒の差はさらに大きいと推測される。

 これだけ大きく差が開くと戦力の差は歴然となる。パリーグではソフトバンクのもたつきで5月11日の時点では西武がトップに立ち先の予想が全く付かないが、セリーグでは巨人、中日、阪神の3チームがAクラス、他の3チームがBクラスになることは確実だ。勝ち負けよりも試合が楽しければ良いとは言え、一寸しらける。ヤクルトからラミレスとグライジンガー、横浜からクルーンが巨人に、広島から新井が阪神に移籍して大活躍しているから尚更だ。強い者は益々強く、弱い者は益々弱く、グローバル経済の現況が日本のプロ野球にも反映しているようだ。

 一つここで見方を変えよう。勝利数を総年棒で割り「選手生産性」を定義する(選手生産性=勝利数/総年棒)。5月11日現在首位の阪神の勝利数は24、広島は14。選手生産性は?そのとおり広島が阪神を大きく上回る。

 環境問題の解決と貧富の格差解消のためには大量生産・大量消費・大量廃棄の社会から循環型社会への移行が不可欠でGDPよりも「資源生産性=GDP/資源投入量」の向上が大切だと言われている。プロ野球も同じではないだろうか。勝利数だけではなく選手生産性に着目したらどうだろう。高年棒の好選手を幾ら集めても勝利数を増やすのは限界があり選手生産性は下がる。だから選手生産性に着目し金で選手を集めるのではなく自前の選手を育成し、戦力均衡化のために強いチームから弱いチームへと有力選手が移籍するような仕組みを作る。そうなればペナントレースは大いに盛り上がり全球場がホームチームのファンで満員になりプロ野球界の総収入は確実に増大する。そのときには選手生産性を「選手生産性=総収入/総年棒」で定義しなおしてもよい。

 シーズン前からAクラスとBクラスが決まっているようではクライマックスシリーズの存在意義も薄れる。1リーグ制にしてクライマックスシリーズは廃止した方がペナントレースは俄然面白くなる。だが伝統ある2リーグ制を維持するべきだという声が圧倒的に多い。だからこそセリーグの球団経営者には選手生産性の均等化とそれによる総収入増加を経営目標とすることが強く求められる。

(H20/5/12記)


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