☆ 企業と富裕層への増税を ☆

井出薫

 子供のころ、高額所得者の税金は物凄く高かった。プロ野球選手やゴルファーの年収を聞いて驚いたところ、物知りの友人が「だけど8割は税金で持っていかれる」と自慢げに話しをしていたのを思い出す。ところが今では最高でも5割しか課税されない。

 経済のグローバル化と規制緩和で資本が国境を越えて自由に行き交う現在、金持ちや企業への増税は禁句になってしまったようだ。共産党は依然として大企業や富裕層への増税を主張しているが聞く耳持つ者は少ない。かつてはリベラルを自認していた朝日新聞ですら今では国際競争力を重視してか、企業や富裕層への増税を主張することはない。高齢者の医療費や保険料の負担が増大しているのにこれはおかしいではないか。

 企業や富裕層の税負担を軽減することが経済活性化に不可欠で、経済が低迷すれば税収は減少して福祉を充実させることもできなくなる。企業や富裕層に増税すれば結局回りまわって高齢者や一般庶民が困ることになる。これが企業や富裕層の税負担軽減の根拠とされる。

 だがそれは本当だろうか。企業への増税が直ちに業績悪化、競争力減退に繋がるとは思えない。富裕層に増税したら皆海外に移住するとも思えない。日本社会が秩序を維持し、人々の勤労意欲が失われない限り、新しい税体系でも今までどおり、いや今まで以上に遣っていけるはずだ。増税したら資本がいっせいに日本から逃避し、金持ちはみな海外に移住し貧しい者だけが日本に残るなどという考えは杞憂に過ぎない。

 高齢者や低所得者に負担増を求める前に、企業と富裕層の増税を真剣に検討するべきだ。

(H20/4/26記)


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