☆ 外資がそんなに嫌か ☆

井出薫


 ダイエーの身売り問題で読売ジャイアンツの渡辺オーナーの「外資のはげたかファンドなんぞにダイエー球団の経営を握らせることは許さない。」という発言が某スポーツ紙の一面を飾っていた。ダイエー球団の経営権の問題はとにかく、日本最大の発行部数を誇る新聞社の社長が外資系投資会社を十派一絡げに「はげたかファンド」などと決め付けるようでは情けない。

 外資の買収ファンドが日本の企業や事業を買収することがそんなにけしからんことなら、なぜ、国策銀行として日本経済の成長を支えてきた長銀を外資が買収したときにそれに強く抗議しなかったのか。日本人の税金で作られたシーガイヤが外資に買収されたことは問題ではなかったのか。大新聞の最高責任者が自分の思い入れだけであれこれ言うのは不見識だ。

 買収ファンド、しばしばはげたかファンドと揶揄される外資系投資会社は人の不幸を餌に暴利を貪っているという印象がある。確かに、破綻した企業を買収して大きな利益を得ていることもあろう。だが、決してノーリスクで利益を得ているわけではない。先見の明がなく、買収した企業の再建に失敗すれば大きな損失を蒙るのだ。市場経済の中、経営が行き詰まり、自力では再生できない企業がでてくることは避けられない。その中には、経営体制を変え、事業の遣り方を見直せば再生可能なものもある。そういうときに活躍するのがこういった投資会社なのだ。

 問題は外資の買収ファンドにあるのではない。日本に、破綻した企業を再生させるノウハウが不足していることが問題なのだ。日本になければ外資に頼るのもやむをえない。ダイエーをこのまま放置すれば最悪の結果になり、多数の社員が職を失い路頭に迷うことになりかねない。外資は平気で人員削減をすると言われるが、倒産すれば人員削減どころの騒ぎではなくなる。

 外資といえば、利益本位で人やものを大事にしない、短期的な視野でしかものをみないなどと非難するひとが多いが、不況下、日本の企業だって同じだ。むしろ、改革が必要とされるいまこそ、日本は外資から大いに学ぶべきだろう。敗戦後、日本は外国から大いに学び豊かになったことをもう一度思い出してもらいたい。

(H15/7/23記)


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