☆ 民主党の取るべき道 ☆

井出薫

 額賀財務相は出席していないと答弁し、守屋氏は額賀氏が宴席に出席していたと証言したと民主党は主張している。どちらかが嘘を言っているか、記憶違いがあるのだろう。

 だが宴会に出席したかどうかがどれほどの問題なのだろうか。有力政治家ともなれば宴席に招待されることは頻繁にある。宴会に出席しただけでは罪にならない。「李下に冠を正さず」の諺に則り、疑われるようなことは一切断るのが正しいことかもしれないが、それでは人間関係が円滑にいかなくなることもあるだろうし、政治家としての正当な仕事をするために情報収集や情報交換の場として利用したいこともあるだろう。

 確かに額賀氏が偽証をしたとなると重大で大臣辞職は勿論のこと、内閣総辞職か解散になる可能性もある。だが額賀氏が発言を撤回することはないだろう。そうなれば額賀、守屋両氏以外の宴会出席者の証言を求めるしかないが容易ではない。そもそも永田メール事件のときもそうだったが、民主党の調査は詰めが甘すぎる。宴会に同席した第三者の証言を得ていれば説得力があったが、守屋氏の証言だけでは弱い。守屋氏が後からそんなことを言った覚えはないなどと言い出したら永田メール事件の二の舞になる。いや、それどころか民主党はライバルを蹴落とすためには平気で捏造をする政党として国民に印象付けられてしまう。印象だけならまだしも本当にそういう体質を持っていたら大問題だ。贈収賄は勿論許せない行為だが、権力を奪取し維持するために捏造をするよりはまだましだ。民主党にそういう体質がないことを心から祈りたい。

 そもそもたとえ額賀氏が出席していたことが判明したとしても、その後が問題だ。一連の事件での額賀氏の役割が明らかになり贈収賄の全容解明、防衛省と防衛族議員の悪しき関係の暴露に役立つというのであればもちろん大変に意義がある。だが民主党にそこまでの展望があるとは思えない。選挙前にできるだけ相手を叩いておきたいという魂胆しか見えてこない。勿論同じようなことは自民党もやっているし、日本国内に限られたことではなく世界中のどこの国でも見られる光景だろう。だが、それだけの目的でいつまでも国会審議を遅らせることは国民のためにならない。

 民主党は額賀問題だけに固執するのではなく、防衛省を取り巻く様々な問題に多角的にアプローチして、防衛省の抜本的改革を目指すべきだ。額賀氏の偽証を明らかにすることができたとしても、それだけでは選挙用の宣伝材料にしかならない。

 勿論今日の混迷を招いた最大の責任は、防衛省と癒着し、国民の代表として官僚を指導監督するという重大任務を疎かにしてきた自民党にある。たとえ額賀氏が濡れ衣だったとしても、それを材料に野党を責める資格は自民党には全くない。与党で衆院の3分の2の議席を握っているからと言って、新テロ対策特別措置法の強行採決はとうてい認められない。まず衆院の解散総選挙を実施して勝利を得てから遣るのでなければ筋が通らないことを肝に銘じておいてもらいたい。

(H19/11/30記)


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