井出薫
安部首相が「海自による給油継続は対外公約であり、国会で成立できなければ辞職する」と公言した。だがこれはおかしい。 安部首相が、給油継続が日本のため、国際社会のために不可欠だという信念を持っているのならば、現行のテロ特措法で現在のところ特段の不都合が生じていないのだから、現行法継続を提案して国会での可決を図るべきで、姑息な手を使って野党との妥協点を探るのは筋違いだ。もし国会で可決成立の見込みが立たないのであれば、辞職するのではなく、給油継続を重要な争点の一つとして国会解散、総選挙を断行して国民の審判を仰ぐ。これが安部さんの取るべき道だ。勿論、給油継続だけではなく社会保険庁の改革や格差是正など重要課題に対する具体的な政策を提示して総合的に安部政権への審判を仰ぐ必要がある。 いずれにしろ、国会で成立できなかったときに何もせず辞職したら、それは潔いのではなく、無責任だ。対外的に公約したのであれば、諸外国からは安部は尻尾を巻いて逃げたと思われる。だが、解散総選挙で敗北して退陣したのであれば、対外的には「私は国民から拒否された、だから私自身の手で約束を守ることはできない」で済む。後は次の政権担当者の仕事だ。 安部さんは政治家としてはまだ若い。次期総理に名が挙がっている小沢、麻生、福田などより10歳以上年下だ。たとえ総選挙で敗北しても、信念を貫けば、いつの日か必ず再び政権の座に就く機会が巡ってくる。だがここで逃げれば、もう誰もついてこない。 先の総選挙で大勝した自民党が議席を増やすことは不可能だろう。だが自民党だけで過半数を取ることができれば国民は安部首相を信任したと見ることができる。幾ら参院で民主党が第一党でも、総選挙の結果は重く、給油継続は可決成立することになるはずだ。 筆者は給油継続には反対だ。それだけではなく、憲法改正、教育改革、経済政策など総じて安部さんの政策に反対している。だから総選挙になっても自民党には投票しない。だが安部さんは意見の違う者とも公の場で真摯に話し合って合意を得ようとする誠実な政治家だと評価している。安部さんのような政治家こそ、成熟した民主制社会に相応しい。思想信条は違っても、安部さんには頑張って欲しいのだ。だからこそ、絶対に逃げないでもらいたい。 |