☆ ドーピング ☆

井出薫

 ソフトバンクのガトームソン選手がドーピングで20日間の出場停止、ソフトバンク球団に750万円の罰金が課せられた。ガトームソン選手はキャンプの時期に薬物の使用を球団に申請しており、責任は確認を怠った球団にある。だが昨年まで所属していたヤクルトでは申請を受けて調査した結果禁止薬物であることが判明し本人に使用しないように通達したと言うから疑念が残る。昨年禁止薬物であることが通知されていたのであれば、再申請することは普通考えられない。ヤクルト、ガトームソン、ソフトバンクのいずれか、あるいは全員が嘘を吐いている可能性がある。ドーピングの蔓延を防ぐためにも、処分をしたからそれでよしとするのではなく、徹底的に真相を究明してもらいたい。

 ドーピングの厳罰化は世界的に進んでいる。それなのに一向にドーピングがなくならない。かなり前の話だが、薬を使えば五輪で金メダルを取れるが5年しか生きられないとしたら薬を使うかと質問したところ5割(7割だったかもしれない)の選手が使うと回答したというアンケート結果が発表されたことがある。それほどまでにスポーツ選手の栄光への意志は強い。

 だが、そうは言っても、身体に悪影響を及ぼす薬物を使うことは健康衛生の観点から許すことはできないし、薬の力で勝ったとしても人々はそれを評価せず、アンフェアだと非難するに決まっている。ドーピング隠しの技術も進歩しているとのことだから徹底的な検査を実施するとともに、勝利に固執する選手や関係者を啓蒙することも必要だ。

 一方、スポーツ観戦する側にも問題がある。筆者は里見からしばしば勝ち負けに拘りすぎだと批判され、そのとおりであることを自覚しているが、筆者に限らず、勝ち負け、メダル獲得に拘る人が余りにも多すぎる。メダルが期待され失敗に終わるとすぐに非難が殺到し、一方メダルを獲得すると賞賛の嵐になる。だが、勝負は運の女神が決める。鳥人と呼ばれ金メダル確実と言われた棒高跳びのブブカですら金を逸したことがある。勝ち負けに拘るとスポーツを汚れた詰まらないものにしてしまう。最善を尽くして闘う選手に声援を送り、結果がどうであれ終わったときにはその奮闘に温かい拍手を送る。こういう姿勢を持つことが大切だ。

 スポーツは私たちの生活をより良いものにしてくれる。だが勝負に拘ると台無しになる。選手とファンがそのことをともによく理解してスポーツを楽しむようにしたい。

(H19/8/11記)


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