☆ 皆で反省すれば怖くない ☆

井出薫

 赤城農水相の事務所費疑惑が浮上した。要するに自民党議員は(他党の議員も?)皆同じようなことをやっていたということなのだろう。

 こういうことはよくある。四半世紀前の話しになるが、筆者も若い頃は勤務先の景気がよく、仕事に託けて、会社経費で飲み食いしたりタクシーを使ったりしたものだ。すべての部署でそんなことが行なわれていたわけではなかったが、部長から平社員まで誰でも同じようなことを遣っており、疚しさがないわけではなかったが、悪いことをしているという感覚は乏しかった。筆者の勤務先だけではなく、他の大企業でも同じようなことが行なわれており、「社用族」という言葉がよく使われていたことを思い出す。おそらく国会議員も同じような気分なのだろう。

 だが高度成長が終焉して日本社会は変わった。私用で会社の金で飲食したり車を使ったりすることができる企業はない。企業が空前の好業績を挙げていると言っても、経費を絞りに絞り込んだ結果に過ぎない。政治家もそういう時代の変化を察して行動する必要がある。

 30年前ならば事務所費に私的な費用を計上するくらいでは国民から厳しく批判されることはなかっただろう。しかし今は違う。景気がよいと言っても、国民は少子高齢化社会に突入して将来に不安を抱いて生活している。格差拡大で好景気などという言葉がほど遠い人も増えている。

 安部首相は友人を大切にする優しい人らしく、今度も懸命に赤城氏を庇っている。だがそれだけ他人に思い遣りがあるのなら、正直にこう国民の前に告白するべきではないか。
 「私たち自民党政治家はお金の使い方がルーズだった。国民から厳しく叱責されるのも当然のことと受け止めている。法を改正して、お金の使途はすべて国民に公開することで、透明性を確保して、社会的不公正が生じないようにする。」

 こうすれば、特定の政治家だけがスケープゴートにされることはなくなり、松岡元農水相の悲劇を繰り返す恐れもなくなる。日本には身内を大切にするという美風がある。だからこそ、皆で反省して遣り方を変えればよい。

(H19/7/10記)


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