☆ 収益の再分配を ☆

井出薫

 年棒の高くなった選手を次々と放出して補強もしない、弱くなって当然だ。そのセパの代表的なチームであるオリックスとヤクルトが5月16日現在最下位を低迷して浮上の材料すら見当たらない。だが球団側にも言い分はある。プロ野球と言えどビジネスに変わりはなく健全な財政を維持することは絶対条件となる。

 プロ野球人気が峠を越えて低迷期に入っている現在、弱小球団の収益は軒並み減少傾向にある。収益の改善が見込まれなければ費用の削減をしなくてはならない。そうなれば年棒の高い選手の放出は当然の施策ということになり、一概に戦力強化の努力が足りないと非難するわけにはいかない。

 だが、この傾向が続けば強豪チームと弱小チームの戦力格差が広がり、試合が詰まらなくなる。プロ野球人気はマスコミが言うほど衰えているとは思わないが、それでもこのままではスター選手の相次ぐ大リーグへの移籍で、いずれ本格的な冬の時代に突入してしまう。

 ヤクルト、オリックスなど弱小球団のファン開拓の努力が不足しているのは事実だ。だが、巨人、阪神という二大勢力が突出している日本のプロ野球界では他の球団がファンを獲得することは容易ではない。札幌の日ハム、仙台の楽天が一定の成功を収めていることを考えると、本拠地を移すのが一つの手だろう。だが札幌と仙台を押さえられてしまった現状では、多数のファンを集められる場所は思い当たらない。

 大リーグでは、放映権収入を各チームに分配したり、ヤンキースのような選手の年棒総額が高いチームにぜいたく税を課し、それを他のチームに配分したりするという収益の再分配システムが確立されている。それでも各チームの戦力の差は小さいとは言えないかもしれないが、ヤンキースを除くと優勝争いに加わるチームの顔ぶれが毎年変わっており、再分配システムが功を奏していることは間違いない。

 日本でも同じような仕組みを早急に取り入れることが必要だ。FAや大リーグへのポスティングシステムによる移籍などで、選手の年棒が高止まりしている現在、ドラフト制度の改革だけでは戦力の均等化は望めない。収益の再分配で弱小チームが戦力の充実を図ることが可能となるシステムが不可欠だ。

 競ってこそスポーツは楽しい。どこが日本一になるかシーズンが始まってみないと全く予想が付かないというのが一番盛り上がる。野球人気の維持拡大のためにも早急な対策が望まれる。

(H19/5/16記)


[ Back ]



Copyright(c) 2003 IDEA-MOO All Rights Reserved.