☆ 公務員の人事制度の改革を ☆

井出薫

 線路に立ち入り自殺を図った女性を救助した警察官が12日午後、治療の甲斐なくお亡くなりになった。享年53歳。市民から慕われる立派な警察官だったという。心からご冥福をお祈りしたい。

 警察官の職位は巡査部長だった。かたや、上級公務員試験に合格し警察庁に入庁するエリート官僚はいきなり警部補に任じられ、余程の不始末でもしない限りは20台で警視に昇進する。警視と巡査部長では3階級の差があり、一般企業で言えば、本社の課長と現場の主任くらいの違いがあると言ってよい。

 地位が高いほど立派な仕事をしているというわけではない。政財官のお偉いさんや提灯記事を書く記者とつるんで訳の分からないことをしている警視だの、警視正だのより、現場で頑張る巡査や巡査部長の方がよほど立派な社会に役立つ仕事をしている。そして国民は警察幹部よりも現場の誠実な警察官を遥かに信頼し尊敬している。

 だが地位の格差は収入の格差に繋がる。音楽が好きで才能もある子供がヨーロッパに留学したいと望んでも、巡査や巡査部長の家庭では難しい。一方エリート官僚の子供であれば夢が叶うだろう。これは明らかに不公平だ。だが警察庁だけではなく公務員の世界ではこういう不公平が未だに罷り通っている。

 安部総理は「再チャレンジのできる社会」を提唱している。ならば、ただちに、この不公平な公務員の登用制度を抜本的に改革するべきだ。いまどき有名大学を卒業して上級公務員試験に合格しただけでは、逆立ちができる程度の価値もない。それなのに、真面目に現場で働いている50過ぎの警察官よりも、試験に合格しただけで何の功績もない新人がずっと高い地位に就くのが現実だ。こんな不公平な制度にも拘わらず、不平を言わずに市民のために懸命に働く警察官には本当に頭が下がる。

 しかし、いつまでもこんなことは通用しない。早く不公平な制度を是正しないと、秩序は乱れ市民は枕を高くして寝られなくなる。亡くなった巡査部長や、現場で身体を張って使命を全うしようと奮闘している公務員達のためにも、総理には、ただちに改革の号令を発してもらいたい。

(H19/2/12記)


[ Back ]



Copyright(c) 2003 IDEA-MOO All Rights Reserved.